世界基準の採用調査は?海外における採用調査の特徴

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ひとことに採用調査といっても、調査項目の定義と目的は、国や地域によって大きく異なります。日本では、海外人材の積極的な雇用政策が始まったばかりです。そのため、諸外国の標準的な採用調査についての知識が、まだ一般に共有されていません。海外人材を雇用するための入管法や労働法の改正のみが先行し、海外人材の採用調査、すなわち人材の品質管理に関する整備は、遅れていると言わざるを得ません。今回は、世界の採用調査がどのように行われているのかをご紹介します。

採用調査の目的 

採用調査の目的を定義すると、以下の3点に大別できます。

  1. 雇用品質の向上
  2. 職場環境の安全管理
  3. 法的規制へのコンプライアンス

1番目の「雇用品質の向上」は、学歴や経歴、資格などに経歴詐称がないかを調査し、さらに前勤務先での人事評価を確認する調査が一般的です。採用時の適性や、能力を確認する為の調査です。

2番目の「職場環境の安全管理」は、犯罪や違法行為の常習犯、アルコール依存や麻薬中毒など、職場環境の安全性に問題を生じさせる可能性がある人材の流入を排除するという目的の調査です。そのため、通常は犯罪歴、反社チェック、訴訟歴、処分歴、破産歴等を確認します。日本では、厚生労働省が職場の安全性より人権保護と雇用維持を重視している為、採用調査を奨励していません。したがって、こうした採用調査は日本では一般的ではありません。

3番目の「法的規制へのコンプライアンス」ですが、日本では雇用者に採用調査を義務付ける法律はありません。義務ではありませんが、運送業の場合、Gマーク(安全運転事業者)の取得の為には、運転手の運転履歴証明書を確認する必要があります。これは、採用調査の一種で、上記3番目の法的規制へのコンプライアンスの為の採用調査と呼べるものです。また、犯歴がある人物が警察官や裁判官になることに賛成する人はいないでしょう。そうした職種であれば、当然のことながら犯歴の採用調査をしています。

在職期間に被雇用者が犯罪で逮捕された場合、多くの場合、懲戒解雇になります。採用前の犯歴については発覚しなければ大丈夫で、在職中に発覚すれば解雇になるのは矛盾しているとも言えます。少なくとも、採用前の犯歴調査については、許容する国が世界の主流です。

採用調査と雇用政策

国や地域を問わず、雇用は、経済の根幹です。安定した雇用が確保できなければ、国家は税収が得られません。法人も人材が確保できず運営がうまくいきません。家庭でも、収入が安定しないとなると、家計が立ち行かなくなります。

そういう意味で、採用調査は、各国の労働省にとっては規制の対象となる場合があります。厳しい採用調査が行われることにより就職率が低下すれば、失業率がアップすることになります。従って、失業率の低下のみを考慮するなら、厚生労働省としては採用調査を奨励したくないわけです。

少なくとも、日本では採用調査をしなければならない義務や、法的規制へのコンプライアンスの為に採用調査をした方がいいというインセンティブもありません。単純に、人材の品質を向上させる為の採用調査しかありません。つまり、雇用した後のミスマッチや、はずれのパフォーマンスを避けたいという動機での採用調査ということです。また、登録者を増やし、人材を派遣したい人材派遣会社にとっても、採用調査はない方がいいわけです。

一方で、人材の生産性を重視する雇用者(法人)にとっては、資格や適性能力の欠如した人材を採用してしまうと経済的損失につながります。雇用者が犯罪や違法行為を行なった場合、職場内環境やパブリシティの面で深刻な被害を受けます。そうしたネガティブな側面をリスク管理するためには、入念な採用調査を行いたいというのが本来の雇用者側の立場です。企業の利益を追求する立場にある経済産業省にとっては、人材の品質管理をコントロールする意味で採用調査の実施に肯定的な立場となります。

資格が必要な職種(例えば医師、弁護士、パイロットなど)であれば、資格確認のための採用調査を実施することは当然です。そうした意味での採用調査に反対にする人は誰もいないと思います。他にも大型バスの運転手や金銭を扱う金融関係者、現金輸送の警備業者、子供のベビーシッター、高齢者の介護士等、人命や財産に直結する職種があります。これらの職種では、犯歴、運転歴、破産歴、Credit Report などの確認調査が実施され、適性に問題がある人物を採用することはリスクを伴います。国や地域によっては、こうした一定の職種の採用に際しては、バックグラウンド調査を義務付ける規制や法律を整備しているところがあります。

大まかな地域分類

採用調査の世界は、大きく分けると北米アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア太平洋地域に分かれます。

この地域内でも国によって状況はまちまちではありますが、おおよその分類で地域ごとの傾向を説明します。まず北米で採用調査といえば、バックグラウンド調査があります。バックグラウンド調査は第一に犯歴調査です。ただし、犯歴だけを指すわけではありません。訴訟歴や身分証、ビザの確認、運転履歴の確認、クレジットレポート、そして日本でよくある経歴、職歴、学歴の確認などを含みますが、北米では学歴や職歴の確認はさほど重視されていないと言えます。

次に、ヨーロッパやアフリカでは、採用調査の中心は身分証やビザの確認です。その次に職歴や学歴の確認が重要視されています。犯歴の確認は、さほど重要視されていません。

アジア太平洋地域では、全体的に学歴や職歴の確認に採用調査の主眼が置かれます。この地域では犯歴が公開される国が少なく、犯歴調査ができないという問題も背景にあります。日本を含むアジア太平洋地域では国によって法律や習慣に大きな差があり、この地域ですべてを一括するのは無理があるかもしれません。

地域別の注目ポイント

ここでは地域ごとに、採用調査の優先ポイントを細かくご紹介します。

北米

北米のアメリカ・カナダでは、採用調査といえばまず犯歴調査、身分証確認、その次にI-9 Form、つまり就労ビザの確認です。4番目は、運転履歴の確認です。雇用注意義務違反(Negligent Hiring)の規定もあり、好むと好まざるとにかかわらず、採用候補者についてほぼバックグラウンド調査を依頼しておかなければならなりません。バックグラウンド調査は主に犯歴調査のことであり、バックグラウンド調査を採用調査と定義していいのかどうかについても疑問が残ります。日本で定義されている採用調査の範囲とはやや異なっている感があります。

ヨーロッパ・中東・アフリカ

ヨーロッパ・中東・アフリカでは、まず第一に前勤務先での評価確認となります。次に身分証の確認、3番目が学歴確認、4番目が犯歴確認です。 ヨーロッパは、北米より日本に近い状況ですが、相違点も多いのが現状です。移民が少ない日本では、身分証確認やVISA確認の為の採用調査を行うという発想が出にくいですが、移民が当たり前のヨーロッパ諸国では、身分証確認やVISA確認が採用調査の重要事項となっています。

アジア太平洋地域

アジア太平洋地域では、1番目が前勤務先での評価確認、2番目が学歴確認、3番目が身分証の確認、4番目が犯歴確認となっています。この地域では全ての採用候補者に採用調査をする習慣がなく、金融、医療、テクノロジー系等、高度な学歴が求められる職種に特化して採用調査が行われる傾向が強いです。その為、欧州やアジア地域では、学歴確認、職歴確認の需要が高くなっています。

採用調査のカルチャーギャップ

採用調査義務

まず北米のアメリカカナダでは採用調査義務違反(Negligent Hireing)という規制があり、どんな採用でもほぼ確実に採用調査が行われます。採用のバックグラウンド調査を行わずに採用した従業員が不祥事を起こした場合、雇用者側が損害賠償請求の対象になってしまいます。そのため、どんな作業でもバックグラウンド調査を行うという習慣ができています。

高度な学歴や資格が要求される職種以外でも、採用調査を行うことから、調査の最大の目的は犯歴確認や訴訟歴確認です。他に、就労資格があるかどうかの身分確認と、車社会であるため車両の運転履歴の確認がほぼセットとしてチェックされます。

公開情報の範囲

アメリカでは訴訟歴、犯歴、運転履歴などはほぼ公開情報です。公開されている情報だからこそ、雇用者側でそれを確認する義務が発生しています。この辺りの精度は、日本の相談者からは想像もつかない部分だと思います。日本の採用調査の相談者からは、外国人材の犯歴訴訟歴や運転履歴を確認しようとする発想が出ることがありません。また、日本では外国人材がまだ少数派のため、就労資格の確認や、身分証の確認をするという発想も出にくくなっています。さらに日本ではマイナンバー制度 (身分証番号制度)が浸透していないため、採用候補者の自国での身分証番号を取得するという考え方が出てきません。身分証番号を取得しないと、本国での身分確認が困難になります。

逆にアメリカの採用調査の相談者は、日本出身の採用候補者を採用する際に調査調査を行い、日本人から身分証番号を取得しようとします。しかし、日本人はまだ自分のマイナンバー番号を記憶している人はほとんどいません。それに代わるものとしてパスポート番号や運転免許証の番号を通知するケースが多々あります。ただし、日本政府はバックグラウンド調査という考え方を理解していないため、パスポート番号や運転免許証番号の真偽を確認する制度を用意していません。仮にマイナンバー番号を通知されたとしても、日本政府ではその番号の真偽を確認し、回答する制度が用意されていません。したがって、その身分証番号は採用調査の一環としては意味をなさないことになってしまいます。

また、犯歴訴訟歴や運転履歴は、日本では極秘情報扱いとなっています。アメリカの採用調査の相談者からすれば、当然それらの情報が確認できると思って相談してきます。しかし、日本では何一つ期待に応えられない状況となり、そうした問い合わせのほとんどは相談だけで終わり、アメリカの採用調査相談者からすれば何にも確認できないため、日本出身者の採用については見送るしかない、という結論に達することも考えられます。

逆に、日本の採用調査の相談者が、例えばアメリカ出身者の調査を考えた場合、アメリカの採用調査で主流の犯歴、訴訟歴、運転履歴、身分証確認などの項目を調査しようとする発想がありません。前勤務先での人事評価を調査したいというニーズが日本の依頼者からは最も多いのですが、ここにも問題が発生します。日本では採用候補者に調査することを通知せずに調査することが主流です。アメリカでは、それは通りません。公正信用報告法 (Fair Credit Reporting Act)で、採用候補者から調査同意書(signed release)を受ける必要があります。こうした書類が整ってないと、前勤務先での人事評価の調査は困難になります。

また、アメリカでは学歴や職歴は公開情報ではありません。日本の相談者が気にする、こうした点に関しては主流の調査ではないため、簡単にデータベースで確認できる情報ではなくなります。

カルチャーギャップを踏まえた依頼方法 

アジア太平洋地域であっても、西側の列強諸国の植民地を経験した国では、東アジアの日本や中国、台湾、韓国に比べると西洋諸国に近い採用調査が可能です。特に旧大英帝国の植民地であった、オーストラリア、ニュージーランド、香港、シンガポール、マレーシア、ミャンマー、インドなどでは、採用調査といえば犯歴や訴訟歴の確認が中心となる慣習が浸透しています。

ヨーロッパやアフリカに関しても、旧大英帝国であるイギリス、そしてその植民地であったナイジェリア・ガーナ・南アフリカなどでは、採用調査=犯歴調査という伝統が浸透しています。

旧大英帝国系の国では、コモンローという法体系が浸透してます。この法体系では、成文法と呼ばれる大陸法(コンチネンタルロー)と異なり、法的判断は法律条文に文書化されておらず、過去判例を参照することによって判決を出していきます。その為、あらゆる訴訟履歴が公開されていて、誰でもアクセスできる状態になっていることが原則となります。その意味で、犯歴や訴訟歴が当然公開情報となるわけです。刑事事件も裁判所で判決が出るわけですから、訴訟歴に含まれます。

こうした文化的法的な背景があるため、コモンローが浸透している諸国では、犯歴や訴訟歴をチェックするのが当然であるというコンセプトができています。

イギリス以外の大陸法を採用しているヨーロッパの国では、また、法律や考え方が違い、訴訟履歴が公開情報ではない国が多数を占めます。アジア・アフリカ圏でも、大陸法の影響が強い国では、犯歴や訴訟歴を公開しないという考え方が主流です。

採用調査のまとめ

外国人材の採用調査においては、上記のようなポイントを踏まえ、どんな調査方法がその国で主流であるのかを考慮し、自国の常識だけにとらわれない柔軟な調査依頼が求められます。

Japan PIなら、諸外国の法律や慣習を熟知したスタッフが、CII(国際調査協議会)、WAD(世界探偵協会)、在日米国商工会議所等の世界各国のネットワークを駆使して、調査を実施できます。まずはお気軽にお問い合わせください。

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