リファレンスチェックが有効なのは、新規採用で有力な候補者を絞り込んだときです。
実際にリファレンスチェックを行う段階になると、以下のようなことで困ることがあるかと思います。
リファレンスチェックで何を聞けばよいでしょうか?
注意する点はありますか?
毎回リファレンス先に同じ質問をしていて大丈夫でしょうか?
回答者の話し方のトーンを裏読みした方がいいでしょうか?
表面的な情報しか集まらない状況を脱却する方法はありますか?
これらの問題に対して、これから対処法を解説します。
リファレンスチェックへの疑問
リファレンスチェックが、採用審査の形式的な手続の一貫の一部以上の効果を発揮する可能性があります。
採用の決断をFace to Faceの印象や面接内容、申告された情報のみに頼っては危険です。一部の採用候補者は、自分のスキルや適応能力を誇大宣伝、もしくは自身もスキルを客観的に捉えられていない部分がある可能性があります。
有効なリファレンスチェックを行うことで、こうしたミスマッチのリスクを防ぐことができるのです。
過去の同僚や部下や上司は、特定の勤務環境やトラブルが発生した時に、採用候補者がどのようなパフォーマンスを発揮するか、よく知っています。リファレンス先は採用候補者の強みや弱点について理解し、特定の勤務環境へ配属された時、どうなるか的確な予測をすることができます。そして採用した会社はその情報に基づいて、採用候補者に適切な労働環境を与えることができるのです。
以下、有意義なリファレンスチェックを行うためのアドバイスを記載します。
面接した時の印象を分析
最初のステップは、その採用候補者を面接した人たちの意見を聞きます。
心配な点、追加確認したい部分についてなど、何についてもっと知りたいかということが、リファレンスチェックの質問の基本となります。リファレンスチェックの本来の目的は、履歴書記載事項の単なる事実確認だけではなく、採用候補者の能力や適正についてもっと深く理解することです。
また、どういう立場の人が、会社が聞きたい情報に回答できる人物かを考えてください。採用候補者とも相談し、最適なリファレンス先の提供を求める努力をしましょう。
たとえば、候補者のリーダーシップスキルの評価を得たい場合、元部下に取材します。 候補者の適正に関する質問については、元上司に取材します。彼のチームワークについての評価を得たい場合は、同僚に取材します。 候補者にもっても、採用予定企業の担当者と協力しながらリファレンス先を提供することが非常に重要な作業となります。
会話の方向性を決める
リファレンスチェックでは、急いで会話を終了させる必要はありません。じっくり時間を取り、話を進めていきましょう。会話の開始時に、リファレンス先が候補者をどのように知っているかを尋ね、相手が候補者を評価する立場にあるのかどうか再確認します。
次に、担当者が候補者を褒めることが重要です。 候補者は優秀な人材で会社内で有望な人物になる見込みがあることを相手に伝えます。候補者に対して否定的な内容から話を切り出すと、相手は候補者への遠慮や忠誠心から、話にくくなり、有益な情報を引き出せなくなります。
建設的な会話になるように演出します
「完璧な人間はいません。業務で成功するかどうかの鍵は候補者のことをよく知り、適切な業務配置や業務環境を整えることです。そのために有意義な意見交換をさせていただき、当社のみならず、候補者にとってもwin-win となる環境づくりにのための情報提供を求めています」といった説得をしていきます。そしてリファレンス先の相手が心を開いてくれれば、中断せず、相手の話をよく聞くことです。あくまでも相手の意見を聞くことが基本ですので、こちらが求めている答えを誘導するような話し方は回避すべきです。
業務内容を説明する
次に重要なことは、会社が候補者に用意する業務環境や必要とするスキルについて具体的な話を切り出すことです。
例えば、候補者がプロジェクトの統括担当者として勤務する予定がある場合、候補者は短い納期と予算の中で最善を尽くさなければなりません。リファレンス先にはに具体的に業務内容を話し、候補者は以前の現場でどのような役割を持っていたか、責任感の有無、候補者が達成したプロジェクト、など具体的な話を聞きます。もしリファレンス先が詳細を把握していない場合は流動的に質問を変えます。
例「もし候補者が私が今説明した業務内容に従事した場合、あなたは候補者がどのように対応すると予想しますか。」などです。具体的な説明を以下に記載します。
答えやすい具体的な質問をする
「候補者についてどう思いますか?」といった一般的な質問は回避します。このような質問をしても候補者への遠慮が出てしまいます。「非常に優秀な方です。」「問題の無い方です。」といった曖昧な回答しか得られなくなってしまいます。
また、Yes No で答えられる質問ではなく、なるべく具体的な的で内容の絞った質問をします。
面接の時に取得した情報を使い、リファレンス先が回答しやすい質問を用意します。例えば、候補者が前勤務先で勤怠管理ソフトの導入に貢献したという情報があるとします。それを話題に出し、「候補者がソフト導入の際にどのような役割を持っていたか教えてください」といった質問をします。
また、前勤務先が合併により勤務環境が大きく変わっていたという情報があったとします。その話題を出し、合併後、新しい従業員が加わった環境の中で候補者はどのような対応をしていたかを聞きます。新しい従業員と新規チームを組んだ時に、候補者の適応能力がどうであったかを質問するのも有効です。
例えば、候補者を管理職として採用する予定の場合、前勤務先で管理職的な役割を担っていたかどうかを質問する必要があります。そうでなければ、いきなり管理職として採用するこにはリスクが伴います。
事実のみを参考にする
リファレンスチェックの聞き取りの際はリファレンス先が話す口調よりも、事実のみを参照したほうが賢明です。リファレンス先も多忙な業務の中で取材に対応している可能性があります。被リファレンス先が、業務の締め切りでイライラしている可能性もあります。そうしたことも考慮して話し方の口調に過敏に反応しない方が賢明です。
ですから、判断は事実のみに基づいて行うべきです。感情的な決定を下すことはできません。しかし、 たとえば、担当者からコンタクトがあることをリファレンス先に知らせていなかった場合、問題です。気まずいことがあり、連絡をできなかった可能性があります。また、リファレンス先から「その候補者について話すことができません」という話が出るのも、あまりいい傾向ではありません。候補者が適任なリファレンス先を見つけることができなかった可能性があります。また、候補者がリファレンスチェックの趣旨を完全に理解していなかった可能性もあります。
候補者には、難しく考えず、ありのままにレファレンス先に事情を話すよう説得します。

EQをチェック
候補者の人間関係の対応能力や、社会的・感情的な自己コントロールの能力も、リファレンス先に確認をするべき事項です。例えば、候補者の客観的自己認識と自己管理能力についてコメントを求めることが有効です。 また、業務への意欲、周囲との共感性、チームへの順応能力、について確認したいところです。
リファレンス先の回答で、採用不採用の判断をするということではなく、候補者が組織内でどういうポジションに向いているかという適正を判断する材料に使用します。以前の職場環境での状況を把握し、次の職場での環境を候補者の為に整備していくことになります。
アットホームな職場環境もあれば、競争の激しい職場もあります。短期で結果を求められる業務もあれば、長期的なスパンでの成果が重視される職場もあります。そうした状況の中で、候補書をどう組み入れていくかが人材活用の鍵になります。
リファレンス先との会話を終了する前に、最後に候補者について知っておくべき事や知っていて役に立つことはありませんか、という質問をすることをお勧めします。そうするとリファレンス先が言い忘れたことを思い出して貴重な情報が得られる場合があります。
工夫を凝らした採用審査
会社の方針で形式的な採用審査しか行なっていない場合、採用担当者が工夫を凝らして独自の採用審査を行うことも有効です。企業の方針で深い採用審査ができない場合は、候補者を知っている別のネットワークの関係者に連絡を取ることも検討すべきです。
(例:業界団体、個人的なつながりの関係者、リンクドインなどで判明する過去の関係者など)
※採用者が入社してからミスマッチが発生すると企業にとっても候補者にとってもデメリットとなります。
ピンポイントアドバイス
- 面接段階の印象を分析し、想定される懸念材料を一つか二つピックアップしておく
- リファレンス先に取材中は話を中断したりこちらから答えを誘導したりしない
- 会話の最初に候補者に否定的な意見を言わない(そうすると被取材者は遠慮して話したがらなくなる。)
- 声のトーンや話し方よりも、客観的事実を重視する
- 指定のリファレンス先だけでなく、LinkeIn等で過去の関係者を割り出し取材を行うことも検討する
リファレンスチェックの他にも採用前後の雇用調査について記載しております。