【世界17ヵ国】採用調査の特色と具体例

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前回の記事では、世界の各地域における採用調査のカルチャーギャップについて解説しました。

今回はさらに細かく、国別の採用調査の特色について、最新の状況とあわせてご紹介します。

北米

アメリカ

アメリカでは、ほとんど全ての採用の場面でバックグラウンド調査(身辺調査)が実施されます。採用調査の主目的は、犯歴、訴訟歴、運転履歴と身分証の確認です。その他、特定の技術や資格が要求される職種では、学歴や経歴の調査やクレジットレポートが確認される場合もあります。アメリカでは、雇用忠義義務違反(Negligent Hiring)という法規制があり、採用時にバックグラウンド調査を怠ると、罰則や訴訟の対象となる可能性があります。

欧州(EMEA = Europe, the Middle East and Africa

イタリア

イタリアにおいては、かねてより慣行としてバックグラウンドの調査が実施されてきました。しかし、近年は法律で調査が制限されています。一般的に、雇用主がチェックする項目は、教育と雇用とされています。法律がこのような身辺調査を完全に禁止しているわけではありませんが、調査の実施には特定の要件が満たされる必要があります。過度な調査はできないため、採用候補者の役割に応じて、必要最小限に留まる必要があります。

フランス

雇用主は、採用手順に関するCNILガイドラインやフランスの労働法、データ保護法に注意する必要があります。CNILとは「Commission Nationale Informatique & Libertés」、日本語では「フランス共和国データ保護機関」と訳されることが一般的のようです。

ドイツ

法的にバックグラウンド調査を雇用前に義務付ける規制はありませんが、候補者に内定を出す前に、身元調査を行う必要があります。 この際、候補者には、実行する可能性のある調査を事前に通知しておく必要があります。

ベルギー

ベルギーには従業員の採用と選択を規定する法律がいくつかあります。これまでの経験則では、雇用者はポジションに関係のない質問をすることは許可されていません。採用調査は、チェック項目が、候補者が応募したポジションの性質とパフォーマンスの要件に合致しているかによって、合法かどうかが決まります。

ポーランド

ポーランドには、採用のオファーを管理する明示的な法律がありません。そのため、採用のオファーの前に、採用調査を行う必要があります。 したがって、採用のオファーを出す(出さない)前に、候補者から提供された情報を調査しておく必要があります。

アイルランド

多くの法的制限と実務的な問題のため、アイルランドでは、実質的に身元調査を実施することが困難とされています。

イギリス

英国では、候補者の身元調査を行うのが一般的です。 最も一般的なチェック項目は、雇用、教育、および犯罪歴チェックです。

チェコ共和国

チェコ共和国で基本的な身元調査を行うことは標準的な慣習ですが、採用調査をよく行うビジネス業界は特定されています。 また、雇用主が、採用調査の際に第三者機関を利用することが、法的に認められています。 

スペイン

スペインでは、一般的には採用候補者への調査は実施されません。ただし、採用者のポジションに応じて採用調査が合理的に必要と認められる場合は、採用調査の実施が許可されます。

アジア・太平洋地域

シンガポール

身元調査の最も一般的なタイプは、候補者の雇用記録、学歴、犯罪歴、および財務記録/歴史に関連しています。 雇用主はまた、公平な雇用慣行に関する三者ガイドライン(TCFEP)を考慮に入れ、これが差別的慣行となる可能性があるため、求職者の職務への適合性の評価に関連しない情報を求めないようにすることをお勧めします。公開情報のメディアチェック等を介して取得できる情報は、候補者からの同意は必要ありませんが、採用の決定の判断に使用する場合、その関連性および合理性が問われます。

インドネシア

インドネシアでは、身元調査を行うことが標準的な慣行となっていますが、これらは採用プロセスで差別的に使用されるべきではありません。多民族国家であることから慎重な運用が必要となり、文化・宗教・思想面での信用調査は非常にまれです。以下の条件が満たされていれば、チェックを実施できます。 バックグラウンドチェックを行うためには、いくつかの条件を満たす必要があります。 また、実施される身元調査が、応募するポジションに適切かつ釣り合いが取れている必要があります。

インド

収集できる情報の種類に関して、インドの法律に基づく制限はほとんどなく、インドではバックグラウンドチェックを行うことが標準的な慣行となっています。具体的には、候補者の教育と職歴のチェックが最も一般的です。

また、雇用者が第三者機関を使用してバックグラウンド調査を行うことにも許可されています。ただし、情報管理者と情報提供者は、機密の個人データおよび情報の収集、保存、処理、転送の保護に関する規定を遵守しなければなりません。

フィリピン

雇用主が候補者の経歴調査を行うことは、フィリピンでは標準的な慣行です。 個人データの収集は、2012年のデータプライバシー法に準拠するため、同法への配慮が必要です。 同法は、個人データを処理する前に、本人に同意を得る必要があります。 ただし、個人情報が既にパブリックドメインにある場合、その限りではありません。したがって、候補者の同意も必要ありません。

日本

 就職前の身元調査を行うことは、日本では標準的な慣行となっています。 ただし、すべての状況で必ず調査が実行されるわけではありません。 そのことを念頭に置いて、雇用主は常にバックグラウンドチェックの必要性を考慮し、採用調査の結果に異議を唱えられたり、補償を求められたりするリスクとバランスを取っていく必要があります。 採用調査は通常、採用の合否を決定するために行われます。 したがって、採用決定後は、原則として、身元調査は認められません。

マレーシア

マレーシアでは、雇用主が候補者の経歴調査を行うことは標準的な慣行です。 ただし、そのようなチェックは、候補者の同意やその他の条件を満たす必要があります。通常、調査目的の範囲を超えた個人データの収集は規制されます。

タイ

タイで身元調査を行う慣行は、雇用主によって大きく異なります。 バックグラウンドチェックが行われる場合、一般的に言えば、教育、専門資格、雇用記録、犯罪歴のチェックがメインとなります。

まとめ:世界各国の採用調査

採用調査は、雇用促進や雇用維持政策、人権への配慮と干渉する恐があるため、非常にセンシティブな運用が求められます。自国での採用調査の実施ノウハウがあるからといって、その慣習を他国でもそのまま適用できるとは限りません。

採用調査の実施がほとんど義務化されている国から、採用ポジションのに応じて必要な範囲だけの調査を許可する国、そして、採用調査自体をほぼ全面的に禁止する国まで、様々な国があります

また採用調査には雇用者の品質管理を目的とするもの、職場の安全性のリスク管理を目的とするもの、そして、法律や行政ルールに則り義務として行うものの、おおよそ3種類があります。実質的には、職場環境の安全性を確保するための犯歴調査が最も広く運用されており、義務化されていたり、慣習となっている国が世界の主流です。しかし、犯歴のある人間が再就職の機会を失うことは、失業率や治安の悪化を招く可能性があります。そのため、政府の方針として、犯歴確認を採用調査目的で許可していない国も、少数ですが存在します。日本もそれらの国のひとつです。

また、トラブルを抱えていないかどうかを確認する意味で、訴訟歴を確認する慣習の国も多数あります。 訴訟歴が公開情報となっており、身元調査目的で利用できるかどうかは、その国の法体系に依存します。世界の法体系は、コモンロー系と大陸法系に大別されます。コモンローの法体系では、 過去から現在に至る判例の蓄積によって、法体系を進化させていく形態です。そのための基礎として、過去の判例は公開情報である必要があります。コモンローの法体系を採用している国では、訴訟歴の確認が容易であり、採用調査やその他の身元調査の目的で利用することも可能となります。

一方、大陸法は、法律の条文に判決を作成するための根拠が明文化されている、というのがコンセプトです。そのため、過去の判例がさほど重視されていません。したがって、大陸法的な法体系を採用している国々では、訴訟歴が一般公開されていないことが多く、これを採用や身元調査目的で使用することは困難となります。

上記のように、その国の雇用政策、法体系、よくある採用調査の慣習などの、文化的社会的背景を考慮して、海外人材の採用調査を検討していく必要がります。Japan PIでは、国際的なネットワークを通じて、各国の情報収集や新たな提携先の開拓に日夜傾注しています。諸外国での採用調査の際には、ぜひJapan PIにご相談ください。

 

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