住民票と戸籍制度を利用して、自分で人探しをする際の、方法と注意点について解説します。
住民票と戸籍の具体的な利用方法
具体的に、住民票や戸籍で人探しするときの利用方法を紹介します。
住民票に関する方法
債務者の転居先を調べるときに、住民票を調査します。
前住所がわかっているが、転居してしまった場合、住民票の除票の照会で、移転先住所を判明させます。対象者が転居すると、住民票が住民票の除票(古い住民票)となります。
対象者が債務者で、債務を証明する疎明資料を提示できれば、前住所の管轄の自治体で、住民票の除票の交付が受けられます。
貸金業者等では、すぐに、住民票を異動させない債務者に対しては、時効になるまで、6ヶ月毎に債務者の住民票請求をしています。要するに、中長期的な回収計画に切り替えて、債権回収を目論んでいるということです。
戸籍に関する方法
戸籍には、戸籍附表という住所履歴の書類があります。所在調査で有効なのは、戸籍附表です。
戸籍附表には、対象者が本籍を設定している期間の住民票の移動履歴の一覧が記載されています。住民票の除票では、次の転居先の情報しかわかりません。しかし、戸籍附表であれば、本籍が変更されていなければ、現住所まで確実に住所を追跡できます。
戸籍附表を取得するには、対象者の本籍の情報が必要です。本籍を知らない場合は、本籍入りの住民票を取得して、本籍を調べることになります。
住民票や戸籍附表の調査が可能な場合
住民票は同一世帯員のみ、戸籍は直系親族のみしか取得権限がないので、人探しに気軽に利用できるものではありません。
ただし、債権回収等の目的で、債務の疎明資料があれば、例外的に、債務者の住民票の交付を受けることができます。士業種(弁護士、会計士等)には、公簿(住民票や戸籍)の職務請求権があるので、法的な調査目的がある場合は、士業に法的手続きの解決とともに公簿調査を委託することもひとつです。
公簿(住民票や戸籍)の照会方法
戸籍謄本を辿れば、親族全員の家系図と現在生存中の親族の現住所がわかります。以下は、戸籍謄本を取得する際の流れと注意点についてのチャートです。戸籍謄本は、本籍と筆頭者の情報が無いと取得できません。本籍がわからければ、本籍記載の住民票または除票を取得することになります。
本籍わかる | 本籍不明 | ||
↓ | ↓ | ↓ | ↓ |
↓ | 前住所がわかる |
前住所不明(調査不可) |
|
↓ | ↓ | ↓ | |
↓ | 2014年6月以前の転居 | 2014年6月以降の転居 | |
↓ | ↓ | ↓ | |
戸籍取得 |
前住所=本籍と仮定して戸籍と戸籍附表取得 *1 |
住民票取得 | |
↓ | ↓ | ↓ | |
現住所 | 本籍当たれば現住所判明 | 1回目の転居先 |
*1前住所が自己所有物件の場合。賃貸住宅の住所を本籍に設定する人は稀です。
住民票と戸籍を利用する前に知っておくべきこと
住民票と戸籍は、日本の市民管理の基本制度ですが、非常に複雑な制度となっています。
制度の仕組みを詳しく知っていないと、有効利用できません。
住民票と戸籍の違い
住民票には、主に、住所と世帯状況が登録されています。戸籍謄本には出生、死亡、婚姻、離婚、養子縁組等、主に家族状況が登録されています。その他に、戸籍附票という書類があり、これには、住所履歴が記録されます。住民票と戸籍は、全く別のシステムですが、住民票には、戸籍を取得する為の鍵となる本籍が記載されています。また、住民登録が異動される前に、本籍が設定されている自治体にも、住所異動の情報が共有され、住所移動履歴が戸籍附票に記録されます。
住民票は、日本人だけではなく、外国人も登録されています。しかし、戸籍は、日本国籍保持者しか持てません。ただし、外国人でも日本人の配偶者の場合は、日本人の配偶者の戸籍に記載されます。
戸籍と住民票
戸籍は日本市民の出生、親子関係、養子、養子離縁、死亡、婚姻、離婚等を記録する書類です。日本国民は本籍を持つ必要があり、家族に関する全ての出来事を本籍のある市役所に報告する必要があります。
住民票は日本国民の住所情報や世帯情報を記録する書類です。市民は皆、現住所を地域の市役所に報告する必要があります。
住民票(住民票の除票)の記載内容は以下が含まれます。
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 世帯主
- 世帯主との続柄
- 本籍
- 住所
- 前住所
- 自治体の住民登録時期
- 転入時期
- 転出先住所(除票の場合)
- 転出時期(除票の場合)
- 死亡日(除票の場合)
住民票や戸籍取得に必要な情報
住民票を取得する為には、氏名と現住所か2014年6月以降の前住所の情報が必要です。何らかの事情で、実住所に住民票登録をしていない人物もあります。この場合は、住民票登録されている住所の情報がわからないと住民票を取得できません。
戸籍を取得するためには、対象者の本籍と筆頭者の情報が必要です。本籍が不明では、そもそも、管轄の自治体すら特定できず、全く調査をスタートすることができません。本籍筆頭者が不明な場合は、本籍記載の住民票を取得して本籍と筆頭者を確認する事になります。
しかし、ここで問題があります。住民票の除票は、2014年6月20日以前住民票は削除されています。(2014年6月20日以降の保存期間は150年間)
従って、判明している最後の住所が、2014年6月20日以前の場合、住民票の除票を取得する事ができません。
住所や本籍がわからない場合
住民票の(前)住所や本籍がわからないと、いきなり、住民票や戸籍謄本を取得することは不可能です。2014年6月以降の前住所がわかる場合や、前住所が本籍と一致している公算が高い場合で、更に、正当な調査理由がある場合なら、住民票や戸籍の照会にすぐに着手できます。
故意に実住所に住民票を登録していない人物の場合やおおよその住所しかわからない人物の場合、住民票の登録されている住所をなんとかして割り出さなければなりません。
本籍がわからないが、戸籍謄本を取得したいという場合なら、本籍記載の住民票を取得すれば、本籍と筆頭者が判明し、次に、戸籍取得が可能となります。住民票の設定されている現住所や2014年6月以降の前住所がわかれば、本籍記載の住民票、または、住民票の除票を取得することで、本籍がが判明します。
住民基本台帳の閲覧
他のネット情報で、住民基本台帳を市区町村で閲覧して、住所を探し出すことができるという情報があります。しかし、これは、大昔(2006年以前)に可能だった手法です。個人的な人探しの目的では、現在、住民基本台帳の閲覧はできません。他の間違った情報に惑わされないようにしましょう。
2006年11月、住民基本台帳法の改正がされました。それ以後、以下の場合にしか閲覧ができなくなりました。
- 国や地方公共団体が閲覧する場合。
- 統計調査、世論調査、学術研究等の公益性が高い調査の場合。
したがって、個人的な人探しで、住民基本台帳の閲覧が許可されることはありえません。
行方不明者
日本では、債務者の所在調査であれば、債権者に住民票の取得権限が与えられています。権利関係の疎明資料があれば、市区町村役場で債務者の住民票を取得できます。住民票を異動させなかった場合、行政ルールでは、5万円以下の科料に処せられますが、実質的に実罰はありません。ですから、支払い意思のない債務者は、住民票登録を異動させなかったり、偽装したりします。そういう意味で、行方不明者の人探しでは、住民票や戸籍での調査はあまり有効でありません。
住民票の職権消除
住民票を異動させず、役所からの郵便物が届かない状態が5年間続くと、住民票登録が職権消除されます。ニュース報道等で、逮捕された犯人が住所不定無職と紹介されることがありますが、これは住民票が職権消除されているという意味です。
実際住民票が職権消除されると、国民健康保険も持てず、運転免許の更新もできません。つまり、ある程度以上の社会生活をする上では、様々な不利益が生じます。
まとめ
人探しでの公簿(住民票と戸籍)の利用方法は限定的なものですが、活用できる場面では、有効な方法です。制度の仕組みや利用できる場合の条件をよく認識して、利用しましょう。
興信所や探偵業者であれば、こうした公簿調査に依存しない独自の人探しの方法を持っているところがあります。必要でしたら、興信所や探偵に相談してみるのも一つです。
当社では人探しの調査を実施しています。ご相談は無料です。何かお困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。