所在調査は多様な種類と背景を持つ調査分野であり、案件の性質を明確に定義しなければ適切な説明は困難です。日本における多くの記事は、家出人や失踪者の捜索を中心に紹介されている傾向があります。そのため、所在調査の多様なケースが十分に取り上げられていない場合があります。これは、消費者の知識不足につけ込んで着手金ベースでの受注を狙う営業手法が背景にあると考えられます。本記事では幅広い調査事例を整理し、依頼者の方が安心して選択できるよう情報をまとめています。
多くの記事で紹介される調査手法(探偵犬やドローンの使用など)は、自らの意志で失踪した成人の調査には効果が限定的です。これらの手法は、郊外や山間部での遭難救助案件のような特定の状況で有効とされています。
実際の所在調査には以下のような多様なケースがあります:
- 債権回収のための債務者確認
- 投資詐欺師等の所在調査
- 昔の知人や友人探し
- 親による子供の連れ去り案件
- マッチングアプリで知り合った人物の特定
- 裁判の証人捜索
- 特許権保有者の連絡先確認
これらの背景や種類によって調査の難易度は大きく異なり、すべてのパターンについて詳細な説明を行うことは容易ではありません。
所在調査を依頼できない/困難なケース
調査を受注できないケース
以下の目的による所在調査は、法的・倫理的観点から受注できません:
- ストーカー行為
- ドメスティックバイオレンス
- 嫌がらせや報復
- その他の犯罪目的
調査が困難なケース
成人が自らの意志で失踪した場合、有力な手がかりがなければ発見は極めて困難です。また、マッチングアプリで知り合った相手をニックネームとアカウント情報のみで特定することも、コストがかさみ、成功率はケースによって異なり、発見できた場合でも相手への影響に配慮が必要です。そのため、慎重な判断が求められるケースといえます。
法的根拠のない知人探しについても、業者としては慎重な対応が必要です。相続や安否確認などの正当な理由がある場合は別ですが、別居中の配偶者捜索や子供の連れ去り問題など、DVや誘拐などのトラブルに発展する可能性のある案件は特に注意が必要です。
所在調査が必要とされるケース
所在調査のカテゴリーは多岐にわたるため、調査の背景を明確にしないまま「所在調査の料金はいくらですか」という質問をされても、適切な回答は困難です。そのため、まずは「どのようなケースで所在調査が必要とされるのか」を理解していただくことが大切です。以下では、実際に依頼される代表的なケースを紹介します。
- 家出(失踪)した人の捜索
- 投資詐欺師の所在調査
- 相続問題解決のための所在調査
- 行方不明不動産所有者の所在調査
- 親による子供の連れ去り問題解決のための所在調査
- 訴訟の証言者捜索のための所在調査
- 親族の所在調査
- 家出人・失踪者の所在調査
- 債務者の所在調査
- 婚約者や浮気相手の調査
家出(失踪)した人の捜索
一般的なイメージとは異なり、日本では探偵・興信所がライセンス制ではなく、携帯電話の通信や位置情報、防犯カメラ映像、支払い明細等、デジタル社会の各種情報にアクセスする特別な権限も持たないため、家出人や失踪者の捜索における有効性は限定的です。
日本では成人には居住移転の自由があり、警察は犯罪に巻き込まれた可能性や自殺の危険性、認知症高齢者の生命に関わるケース以外では積極的な捜索を行いません。ただし、12歳以下の児童については警察が優先的に捜索しますので、まずは警察への相談を推奨します。
現代のデジタル社会では、携帯電話の使用履歴、位置情報、デジタル決済の利用履歴、防犯カメラのリレー捜査などのデジタル情報へのアクセスが重要ですが、探偵・興信所にはこれらの情報への特別なアクセス権限がありません。そのため、アナログ的な尾行調査や聞き込みなどの手段に限定され、世間のイメージとは異なり、成果は状況や条件によって大きく左右されます。
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投資詐欺師の所在調査
ソーシャルメディア型のロマンス投資詐欺は反社組織の絡んだ組織的な犯罪であり、主犯の摘発や被害救済は困難です。しかし、ポンジスキーム型の投資詐欺については、関係者の背景や所在の調査が可能です。電話番号、メールアドレス、ソーシャルメディアアカウントなどの情報から、詐欺師の実態や拠点を調査することができます。
相続問題解決のための所在調査
国内案件であれば司法書士や弁護士が戸籍謄本を辿って相続人の所在調査を行います。探偵・興信所が積極的に関与する分野ではありませんが、国境をまたいだ相続人の所在調査では探偵業者の調査が必要となる場合があります。
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行方不明不動産所有者の所在調査
日本の公簿管理システムや不動産登記の更新における従来の欠陥により、行方不明の不動産所有者問題が社会問題化しています。全国各地に所有者不明の空き家が多数存在し、こうした行方不明不動産所有者の調査に対するニーズがあります。
親による子供の連れ去り問題解決のための所在調査
離婚した夫婦間での子供の親権争いにおいて、一方の親が同意なく子供を連れ去るケースがあります。諸外国では犯罪とされていますが、日本では十分な法的規制がなく、特に母親による連れ去りは社会的に容認される傾向があります。
ただし、近年は片親による子供の連れ去りに対する処罰を求める動きが活発化しています。一方で、ドメスティックバイオレンスや虐待の虚偽申告などもあり、取り扱いが複雑な現状があります。対象者が意図的に所在を隠している場合は、調査は不可能ではないものの、非常に高いコストがかかります。
訴訟の証言者捜索のための所在調査
企業の組織的不正に関する訴訟において、内部情報を知る退職社員などの関係証人を求める所在調査のニーズがあります。このような案件では探偵業者の調査能力が有効に発揮されます。
親族の所在調査
養子に出された子供からの実母の所在調査、離婚後音信不通になった子供の所在調査などがあります。成人した子供が親との連絡を断絶している場合もありますが、親子間の確執が背景にあり、所在を特定しても子供側が連絡を拒む場合があります。数十年にわたり連絡が断絶しているケースでは、心理的なわだかまりがあることを考慮し、最終的な結果を見極めて依頼を検討することが重要です。
家出人・失踪者の所在調査
家出人や失踪者の調査は難易度が高く、おおよその潜伏先の心当たりがある案件以外では効率的な調査が困難です。一部の業者では、依頼者が十分な情報を持たないまま調査を依頼してしまい、期待した成果につながらないケースも報告されています。案件の性質と業者の説明の整合性をよく見極めることが重要です。
債務者の所在調査
逃亡した債務者の所在調査は、債務者の逃げ方の程度によって難易度が大きく変わります。社会的地位を捨てて逃亡した人物の発見は困難であり、仮に発見しても返済能力に問題があり、結果的に債権回収に至らない可能性があります。債務者の所在を特定できても、法治国家である以上、債務者に危害を加えての自力救済は許されません。
社会生活を維持しながら密かに転居した場合や、住民登録は移動していないが別の賃貸物件に居住している場合などは、発見の可能性が高まります。
婚約者や浮気相手の調査
日本では民法の規定により、浮気相手に対して法的に慰謝料請求が可能です。浮気相手の氏名、生年月日、旧住所、おおよその住所、電話番号、勤務先などの情報から現住所を特定することができます。ただし、浮気相手への責任はパートナー自身ほど重くないため、請求できる慰謝料は少額です。調査費用と弁護士費用を考慮すると、経済的メリットは少ない可能性がありますが、浮気したパートナーにダメージを与え、反省を促す意味では有効な手段となります。
探偵による所在調査の方法
日本では探偵業がライセンス化されておらず、東アジア地域共通の特徴として個人情報のプライバシー意識が非常に高いため、所在調査は他地域と比較して困難な状況にあります。
このような背景から、日本の探偵・興信所が実施できる調査手法は以下に限定されます:
- 尾行調査や聞き込みなどの実地調査(HUMINT:Human Intelligence)
- 公開情報からの情報調査(OSINT:Open Source Intelligence)
携帯電話の位置情報や利用履歴などの信号情報収集(SIGINT:Signal Intelligence)は、民事的な調査では利用できません。
データ調査と呼ばれる手法(携帯電話から契約住所の特定、氏名と住所から転居先の特定など)については、法的な開示請求手続きが基本となりますが、探偵業者には開示請求権限がありません。日本では弁護士が職務請求や弁護士照会の権限を持っており、探偵業者は弁護士と協業して法的な開示請求手続きを仲介できる可能性があります。
その他、ソーシャルエンジニアリング(偽装調査や潜入工作)的手法や、人的コネクションによる秘密裏のデータ取得方法も存在しますが、これらは法的にグレーエリアの調査手法となります。
所在調査では、これらの可能な限りの調査手法を組み合わせて結果を追求することになります。
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聞き込み調査
関係人物にコンタクトして情報収集する調査手法です。滞在可能性のあるホテルや立ち寄り先に対してローラー作戦で電話や直接訪問を行う方法も含まれます。
尾行張り込み
データ調査
ソーシャルメディア分析による所在情報の収集、携帯電話やメールアドレス、ソーシャルメディアアカウントからの所在情報収集など、データ収集に特化した調査を指します。
ローラー取材
聞き込みの一種ですが、可能性のある立ち寄り先などを網羅的に訪問または電話連絡して所在確認を行う方法です。根気よく全ての可能性を調査し尽くすアプローチです。
所在調査料金の相場
前述のとおり、所在調査の種類や規模は案件によって大きく異なります。料金も調査の規模、範囲、活動期間によって変動します。
家出人調査 | 30万円から150万円程度 |
成人した失踪者の調査 | 30万円から150万円程度の範囲 ※探偵・興信所への調査自体は推奨しません。 |
債務者の所在調査 | 10万円から40万円程度 ※隠れ方の程度によって変動します。 |
訴訟証人の所在調査 | 10万円から30万円程度 |
親族の所在調査 | 15万円から30万円程度 ※相手が逃げ隠れしていない場合 |
その他の調査料金についてはこちらをご覧ください。
人件費単価
尾行・張り込み調査 | 1時間あたり1万円から2万円程度 |
聞き込み調査 | 1時間あたり8,000円から1万5,000円程度 ※総額は案件ごとの所要時間見積もりにより決定 |
データ取得調査 | 人件費ベースの料金設定 または特殊情報ソースからのデータ購入経費を含めた総額見積もり |
費用が変動する理由
何度も記載しているとおり、所在調査には様々な種類や背景があるため、ケースバイケースで難易度や料金が異なります。
相談者にとって料金は重要な関心事ですが、それ以前に調査実施が可能かどうかという基本的な点から検討することが重要です。法的な理由の有無によって調査の可否が変わる場合もあるため、これらの条件を最初に考慮する必要があります。
つまり、料金見積もりのために業者に相談しても、そもそも調査が不可能で見積もり不可となる可能性があることを念頭に置いて相談することが必要です。
所在調査を自分でする場合のメリットとデメリット
自分で実施できる調査は積極的に行うことを推奨します。家出人や失踪者の捜索であれば、行方不明届の提出、対象者のビラ作成と配布、ソーシャルメディアでの捜索呼びかけなどは自分で実施できます。知人探しの場合も、一般的なネット検索やソーシャルメディア検索をまず試してみることが重要です。
メリット
費用を抑えることができ、長期間にわたって継続的に情報収集する場合に有効です。
デメリット
時間と労力がかかります。また、捜索方法の知識やスキルの限界により、思うような成果が得られない可能性があります。
所在調査を探偵事務所に依頼する時の注意点
日本では探偵業がライセンス化されておらず、社会的認知も低いため、日本の探偵が取り扱う業務範囲は非常に限定されています。大多数の探偵事務所は浮気調査のための行動調査が主な収入源であり、2番目の収入源として家出人や失踪者の捜索があります。
探偵業法においても、探偵・興信所には特別な権限は一切与えられていないと定義されています。したがって、探偵・興信所に依頼しても、家出人や失踪者の捜索に関しては効率的な調査が難しいケースもあるため、依頼前に調査内容や可能性を十分に確認することが大切です。
債務者の所在、訴訟相手方の所在、親族や相続人の所在、行方不明不動産所有者の所在など、相手が意図的に所在を隠していない対象者に対する調査依頼については、探偵・興信所に依頼する意義があります。しかし、それ以外の案件については、探偵・興信所への依頼は慎重に検討することをお勧めします。
まとめ
人探しの探偵依頼を検討されている方は、人探し探偵のページをご参照ください。調査依頼の手順や事例、調査開始に必要な手がかり等をまとめています。尚、Japan PIでは無料相談を受け付けています。何かお困りのことがありましたらお気軽にお問い合わせください。
FAQ
所在調査はどのくらいの期間で結果が出ますか?
所在調査の期間は、調査の内容や難易度によって大きく異なります。
具体的な期間を判断するには、以下の情報が必要です:
- 探す相手との関係性
- 現在持っている情報(住所、連絡先など)
- 連絡が取れなくなった経緯
- 調査の目的
これらの情報をもとに調査の難易度を分析して、初めて期間の見積もりが可能になります。
期間の目安としては:
- 簡単なケース:1日から1週間程度
- 困難なケース:2週間〜6ヶ月
- 非常に困難な場合:調査不可能と判断することもあります
所在調査の費用はどのように決まりますか?
所在調査の費用は、案件の難易度と必要な調査方法によって決まります。
まず、ご依頼内容を確認し、最適な調査方法を分析します。その上で、以下の要素に基づいて料金を算出します。
主な費用の決定要素:
- データ調査のみで済む場合は、データ取得にかかる経費と作業時間
- 現地調査が必要な場合は、調査員の人件費と交通費などの経費
- 行動監視が必要な場合は、調査員の人数と稼働時間に応じた人件費
つまり、調査の複雑さや必要な作業内容によって、費用は個別に見積もられます。
所在調査を依頼する前に必要な情報は何ですか?
所在調査を依頼する際は、以下の情報を整理しておく必要があります。
準備すべき主な情報
1. 基本的な関係性と経緯
- 依頼者と調査対象者の関係
- 連絡が取れなくなった理由や経緯
- 現在把握している情報(最後の連絡、住所など)
2. 調査の目的と背景
- なぜ所在を知りたいのか
- これまでの経緯を時系列でまとめた資料
3. 対象者の状況に関する情報
- 意図的に連絡を避けている可能性
- 生活環境の変化(住居喪失、服役中など)の可能性
調査会社は、まず依頼内容が違法目的でないかを確認します。問題がなければ、提供された情報をもとに状況を分析し、見積もりを作成します。スムーズな依頼のために、上記の情報をできるだけ詳しく準備してから相談することをお勧めします。
海外の所在調査も可能ですか?
可能な場合があります。ただし、調査の内容によって難易度が大きく異なるため、すべての国で調査ができるわけではありません。
海外調査は地域によって難易度が大きく変わります:
- 欧米諸国やその旧植民地:探偵業が社会的に認知されており、比較的調査しやすい
- アジア・中東・極東圏(日本含む):探偵業の社会的地位が低く、資格制度も未整備。国によっては探偵業自体が禁止されている場合もある
- プライバシー法:アジア地域の方が欧米より厳格な傾向がある
- 政情不安定な国では、当然所在調査も困難。
そのため、国や地域ごとの難易度を考慮して見積もりを行います。ただし、海外・国内を問わず、調査理由に正当性があるかどうかが大前提となります。