米陸運局が顧客データを探偵に販売|アメリカ特有の探偵事情

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アメリカのアリゾナ州で、陸運局が登録者のデータを探偵業界やデータ販売業界に販売していると報道されました。陸運局のデータには、車両の登録番号、所有者や使用者のコンタクト情報、さらに運転免許保有者の顔写真や、 SSN番号(社会保障番号、日本のマイナンバー該当する情報)が含まれていました。

事件の詳細は、VICEの英語記事でご覧いただけます(Arizona DMV Sells Drivers’ Photos and SSNs to Private Investigators, August 28, 2020)。今回の記事では、事件を簡単に紹介するとともに、プロの探偵の目線でアメリカの探偵事情を考察します。

陸運局がデータを販売

記事によると、探偵業者やデータ販売業者自らが、アリゾナ州の陸運局のデータを購入していると認めたということです。アメリカには Freedom Of Information Act という法律があり、誰もが自由に情報にアクセスできるべきだという考え方が根底にあります。そのため個人的な情報であっても、公開にさほどの制限はありません。

ただし、詐欺や金融犯罪にデータが利用されることを避けるため 、公正信用報告(Fair Credit Reporting Act)法や、GLB法(Gramm–Leach–Bliley Act )などの連邦法によって、詐欺や金融犯罪に悪用される可能性が高い個人情報や金融関係データの公開が制限されています。GLB法では、金融機関へのなりすましによる情報取得を禁止する特別規定もあります。詳細は、末尾の用語解説も参照ください。

個人情報保護法が存在しないアメリカ

アメリカには、探偵業者がアクセスできる個人情報のデータベースが存在します。日本人の視点では、そのようなデータベースが一覧できることは驚くべき事実と映るかもしれません。基本的にアメリカでは、氏名・住所履歴・電話番号・訴訟履歴・犯罪履歴などは、ほぼ公開情報となっています。データベースにさえアクセスできれば、 PC上のみで氏名・住所履歴・家族情報などを簡単に取得することができます。アメリカでは、日本のような個人情報保護法が存在しないのです。

ただし、2010年頃から、アメリカでも個人情報保護の意識は高まりつつあります。探偵業者用のデータベースでは、生年月日やSSN番号(社会保障番号)を閲覧すること自体は可能ですが、それを一般ユーザーに報告してはいけない、という規約ができました。

陸運局データと探偵業

かなり昔の時点で、アメリカの陸運局(DMV)のデータは、完全公開情報から非公開情報に変更されました。ただし、実質的には探偵業者などがアクセスできるデータベースを使えば、車両番号から登録者情報を判明させることができます。

その背景には、陸運局が探偵業者やデータ販売業者に登録情報を販売し、資金稼ぎをしているという背景があります。

日本でも、警察は陸運局のデータベースに直接アクセスできる状態となっています 。アメリカでは51州のうち49州で探偵業者のライセンス制度が整備されています。そういう意味で、陸運局のデータに探偵業者がアクセスできることは、問題ではないとされています。

陸運局がデータ販売で金儲け

しかし、今回触れている記事のように、アメリカでも陸運局のデータがそのまま探偵業者などに販売されていることは、一般人からすれば驚きであり、そのことが問題視されているわけです。個人情報保護とは対極の方針を取るアメリカでさえ、だんだんプライバシー意識が高まっているという時代の現れでもあります。

少なくとも、日本のように個人情報保護のみに固執し、調査目的での照会まで全てブロックしてしまうと、犯罪や違法行為、不正などを抑止できなくなる側面もあります。そのような視点で、探偵業者のライセンス整備を含め、もう少し議論がされてもよいのではないかと思われます。

情報は護身ツールでもある

個人のバックグラウンドの情報やネガティブな記録(訴訟・犯罪歴・破産歴・運転違反歴・風評)等の情報が一定の条件の元で公開され、自由にアクセスできるということ自体が、不正な取引から身を守るツールとなり得ます。

例えば、ウイルス感染のクラスターが発生している場所について、全く情報にアクセスできないとすると、危険を回避できなくなります。その意味で、取引・採用・結婚・投資などの活動の際に、相手方の情報が全く取得できないとなると、リスク回避もできないことになります。

だからといって、個人情報を無条件に公開すべきと言っているわけではありません。上述のように、取引、採用、人事、出資、投資、交際などの理由がある場合に限り、個人に関する情報を情報源(公私の団体)が開示すると言う規定を考慮していくことが、今後必要となってくるということです。

要するに、個人情報の第三者開示の条件設定の見直しをするということです。原則的に個人情報が保護されることは、当然必要です。正当な理由がある場合には除外規定が機能し、当事者に情報が公開されるというルール作りがなされることを期待します。

アメリカ探偵業界の用語解説

公正信用報告法(Fair Credit Reporting Act)

公正信用報告法(FCRA)は、消費者の信用情報の収集と、その信用報告書へのアクセスを規制する連邦法です。 信用調査機関のファイルに含まれる個人情報の公平性、正確性、プライバシーに取り組むために1970年に可決されました。

グラム・リーチ・ブライリー法(GLBA)

グラム・リーチ・ブライリー法(GLB法またはGLBA)は、1999年の金融近代化法としても知られています。これは、顧客の個人情報を共有および保護する方法について、金融機関から顧客に説明することを要求する米国連邦法です。  GLBAに準拠するには、金融機関は顧客の機密データを共有する方法を顧客に伝え、個人データを第三者と共有しないことを希望する場合はオプトアウトする権利を顧客に通知し、顧客に特定の情報の保護を適用する必要があります。

偽装工作保護 (Pretexting Protection)

偽装工作(なりすまし、あるいは「ソーシャルエンジニアリング」とも)は、適切な権限なしに、誰かが個人の非公開情報にアクセスしようとしたときに発生します。 これには、アカウント所有者になりすまして、電話、郵便、電子メール、または「フィッシング」(つまり、偽のウェブサイトまたは電子メールを使用してデータを収集する)で第三者の個人情報を取得する方法です。  GLBAの対象となる組織には、偽装調査に対する保護手段を実装することを奨励しています。 たとえば、GLBのセーフガードルール(「情報を保護するためのプログラムを開発、監視、およびテストする」)では、なりすましの問い合わせへの対策の研修を義務付けでいます。 アメリカでは、個人によるなりすまし工作は、詐称罪のコモンロー犯罪として処罰されます。

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