海外からの死亡保険調査|Japan PIの調査事例

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当社では、海外の保険会社から、日本で亡くなった人物の死亡保険調査を多く依頼されます。

今回は、Japan PIが実際に扱ったケースとして、アメリカの保険会社に加入していた、日本人男性の被保険者に対する生命保険の調査依頼の事例をご紹介します。

事件概要

被保険者は、留学後、アメリカで就職した日本人男性でした。独立して会社を設立したのち、日本とアメリカを行き来する生活を送っていました。不幸なことに、日本に帰国している際に事故死で亡くなりました。40代前半でした。彼にはアメリカ在住の日本人の妻と、8歳の娘がいました。

死亡診断書によると、午前2時、ビルの3階にある飲食店の窓から転落し、頭部挫傷で死亡となっていました。取引先との接待で立ち寄っていた飲食店で、壁にもたれかかったつもりが、誤って開いていた窓から外の路上に転落した、とのことでした。

死亡保険調査の通例

アメリカの保険会社への保険請求の場合 、保険受取人は被保険者の死亡状況についてHIPPA (Health Insurance Portability and Accountability Act: 医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)という定型フォームに記入して提出することになります。この書類には、死亡原因や被保険者の基礎的な情報、受取人の連絡先情報などを記入します。また、病院の死亡診断書と、その真偽確認のために、治療記録も添付されることになります。

遺族からの委任状が必要となる

アメリカの保険会社からの依頼で、死亡保険の確認調査を進める時に必ず問題となるのが、個人情報の開示の問題です。保険会社という立場がありながら、確認調査ができないジレンマがあります。

本来であれば、アメリカの保険会社は保険会社の権利として、行政機関や病院、葬儀場、火葬場、墓地などの登録情報にアクセスする権限があります。我々のような調査会社の調査員でも、保険会社からの委託を受けて委任状を持っていれば、それらの情報にアクセスする権利があります。

しかしながら、日本では言語の壁や習慣の違い、委任状の考え方の違いなどから、実務上保険会社からの委任状を用意しても、行政機関や病院、その他団体から情報の開示を受けることができません。日本では、死亡者の遺族(配偶者や子供など)からの委任状を直接受けなければ、病院やその他の団体から情報開示を受けることができないのです。

アメリカではそうした習慣がないため、アメリカの保険会社に対して遺族からの委任状が必要である旨を通知しても、すぐに納得してもらうことができません。そうでないと調査が進まないことを何度も伝えて、ようやく協力してもらえることが多々あります。

保険会社としては、保険受取人に対して、調査を行っていることをあまり通知したくない、という心理も働きます。アメリカ国内での普通の調査に比べると、遺族に連絡を取って委任状を受けたりする手間が余計にかかるため、調査料金がつり上がってしまうことも、アメリカの保険会社が不愉快に思う部分だと思われます。

受取人と遺族が別のパターン

事件の詳細に話を戻しましょう。今回のケースでは、困ったことに保険受取人は死亡者の近親者の遺族ではありませんでした。日本在住の日本人女性で、死亡者との関係性が明記されていませんでした。いちばん近い遺族は死亡者の未亡人で、やはり日本在住の方でした。

まずは遺族に委任状をもらわないと、調査が進みません。そこで、我々から遺族に連絡を取りました。

遺族に連絡したら激怒される

遺族に電話で連絡を取ると、驚いたことに死亡者がアメリカで保険に加入していたことを知りませんでした。こちらが事情を説明すると、未亡人は我々を詐欺師と決めつけて怒り出し、すぐに電話を切りました。

そうなるとこちらはそれ以上何もできないため、アメリカの保険会社に連絡して、次のインストラクションを待つしかありません。

受取人に連絡して調整を依頼

保険受取人も日本在住の日本人であったため、我々が保険受取人に連絡をして取材することになりました。

保険受取人に連絡すると、彼女はアメリカ在住の未亡人との関係があまり良好ではなく、死亡者が治療を受けていた病院、葬儀社、火葬場、エンパーマー(遺体衛生保全業者)などの情報は得られないと話しました。我々としては、それでは調査が進まないため、保険金の支払いが滞ってしまう可能性が高いと説明しました。

死亡者に隠し子がいたことが発覚

我々としても、せっかく業務を引き受けた以上は完結させたいという使命感があります。我々が保険会社に元々の契約情報を確認するように要請したところ、受取人は内縁の妻と記載されていました。

それを確認して、我々が受取人にさらに詳細な事情聴取をすると、受取人がしぶしぶ口を開きました。

「実は、私は彼と不倫関係にありました。彼との間に子供も生まれましたが、認知はしてもらっていません。その代わり、自分の身にもしも何かあれば、君に死亡保険金が入るように保険に入っておく、と提案してくれたのです。今回の彼の死の連絡は、彼の母から聞きました。死亡診断書のコピーも、彼の母からもらったものです。」

受取人の告白で、やっと事情が飲み込めました。アメリカ国内なら保険会社の調査員の立場で書類確認ができるため、未亡人の手を煩わせる必要はありません。しかし、日本では未亡人の協力を得なければ書類確認ができず、保険調査が進みません。

他に、死亡者の母が書類確認の権限を持っています。ただし、詳細な事情や病院の治療費、葬儀場の支払いなどは、未亡人が管理しているため、未亡人の協力が不可欠な部分もありました。

未亡人からの猛抗議

そうこう相談してるうちに、突然、未亡人の代理の弁護士から連絡が入り、こちらの会社の信頼性や案件の内容について逆調査される羽目になりました。その弁護士はかなりの高齢者で、やり取りがなかなかスムーズにいかず困りました。我々がアメリカの保険会社からもらっている書類を送っても、その弁護士は日本語に訳してもらえないと意味が分からないと言いました。アメリカ在住者から依頼を受けた弁護士のくせに、英語を直接理解しないということに不条理を感じましたが、我々は死亡者の隠し子の将来にかかわる問題と思い直しました。我慢して翻訳書類を作成し、弁護士に送りました。

未亡人は、保険の受取人が自分ではないことを当然不審に思っていましたが、最終的には、弁護士もようやく事情を悟り、未亡人と意思の疎通ができるようになりました。結果的に、愛人である受取人の了解を得て、未亡人に事情を説明しました。

隠し子に罪はない

未亡人とオンライン会議アプリで面談を行いました。保険調査とは関係ありませんが、結果的に身の上相談となってしまいました。

「彼はまめな人で良い夫でした。まさか別に家庭があるなんて考えもしませんでした。彼の母からも事情を聞いて、現実をかみしめています。愛人にすがりつかれて、別れられなかったようですね。彼は捨て猫を放っておけない性格だったので、分かる気もします。だけど、隠れて別に家庭を作っていた事が許せない気持ちもあります。」

未亡人はところどころ、涙を流しながら辛い心情を吐露しました。我々も、もらい泣きしそうになるのをこらえながら、彼女の心が落ち着くのを忍耐強く待ちました。

「旦那さんに二面性があったことは遺憾です。亡くなれば罪が消えて仏になるとも言われます。この問題は、隠し子の将来に関わる問題です。子供に罪はありません。どうかご協力いただきたいと思います。」

このように、我々も任務に対する使命感から、必死に説得を試みました。結果的に、なんとか未亡人からの協力を取り付けることに成功し、保険金は無事、本来の受取人であった愛人に支払われました。

保険調査の社会的意義

通常、このような海外からの死亡保険調査はUS$1,100で請け負っていますが、複雑な家庭の事情を調整する作業まで入ってしまうと、割に合わない案件となります。プロフェッショナルとして仕事を遂行するために、同様の調査では今後料金を増額することも考えています。

ただし、死亡保険調査は、保険金殺人や不正申告による保険金詐欺事件等を排除する為に、社会的に重要な意義を持っています。そういう意味で、我々は、どんな案件でも公正な立場で業務を遂行し、社会的責務を果たしていきたいと考えています。

日本国内の保険調査にも対応しています。詳細はJapan PIの保険調査をご覧ください。


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