海外企業の信用調査を行う方法は?バイリンガル興信所による解説

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海外企業の信用調査には、国内の調査とは異なる独自の方法が必要です。

海外企業との取引では、その国独自の商習慣や情報開示のルール、そして、リスクヘッジとしてのデュディリジェンス等の要素を考慮して、信用調査を行います。国内の常識を当てはめるのではなく、海外の主要国で共通的に行われているデューデリジェンスの方法を取り入れなければなりません。

欧米諸国では企業間の取引やM&Aの際に、あとになって不正が発覚したときの訴訟回避や腐敗防止法(FCPA等)の注意義務などの観点から、デューデリジェンスを入念に行い、その調査結果を残しておく必要があります。腐敗や不正の代表的な事例としては、談合、政官界との癒着、マネーロンダリング、サンクションリストの国や団体との取引、行政処分履歴や訴訟歴などです。

海外企業の信用調査が必要になるケース

海外との取引や国際的なM&Aを進めていく際には、欧米諸国の腐敗防止法に対応するリスク管理を十分に行っていく必要が出てきます。腐敗防止法で決められた定型のチェック項目があります。その項目を確認したデューデリジェンスレポートを残しておくことは、後々問題が発生した時に、免責事項として利用できる保険的意味合いを持っています。

デューデリジェンスは、リスクが発生しないための事前確認が主目的ですが、リスク発生時の免責材料としての意味もあります。万が一リスクが発生した場合にも、所定のデューデリジェンスを行い注意義務を最大限果たしていた記録を出すことができれば、それが免責事項として考慮されるわけです。

日本国内では、M&Aのデューデリジェンスの際、弁護士による契約条件の精査や会計士による会計監査のみに偏りがちです。しかし、国際的な要素が入る場合は得に、調査会社が行う信用調査的なデューデリジェンスにも注意を払う必要があります。

M&A

日本では、デューデリジェンスというと、会計士による決算上のデータの確認と弁護士による契約上の瑕疵がないかの確認を指す言葉になっています。しかし、西側諸国で行われている本来のデューデリジェンスでは、弁護士の契約上の精査、会計士の会計監査と並び、調査会社が行う信用調査的デューデリジェンスが重要な役割を占めているのです。日本にデューデリジェンスという言葉が輸入された段階で、元々の言葉の意味が変更されてしまっているのです。

信用調査的デューデリジェンスでは、談合や過去のスキャンダルの噂がないのか、訴訟履歴や行政処分履歴などを入念にチェックします。その他、役員全てに対して、政官界との癒着がないか、コンプライアンス的に問題行動がないかをチェックしていきます。

取引

取引に対しての事前調査の場合、対象企業の内部資料がすべて入手できるわけではありません。対象法人の担当者との面談や打ち合わせの際に必要な資料を取材することは可能です。ただし、都合の悪い情報や企業秘密となる情報まで全ての開示を受けられるわけではありません。

そうした制約の中で、外部から公開情報として収集できる情報を集中的に収集します。従って取引の際は、信用調査的なデューデリジェンスが中心となります。デューデリジェンスという言葉は、必要な義務を果たすと言うこと意味しています。その意味で、対処方針から任意で提供を受けられる最大限の情報収集と、公開情報におけるネガティブ情報の集中的なチェックを行うということが基本になります。

国や地域による企業の特色

よくある誤解ですが、単に企業信用レポートを取得することとが、デューデリジェンスである認識している世間一般の風潮があります。しかし、企業信用データは、法人の基礎的なプロファイルや財務データを記載したレポートです。そのレポートを確認するだけで信用調査が完了したと認識するのは賢明ではありません。

どこの国でも標準的な企業信用レポートを提供するデータバンクが存在します。D&BやXperiaなど国際的な企業データバンクは、世界中に支店や提携先を擁し、主要国ほとんどで企業信用レポートを提供できる体制を整えています。直轄の支店の社員が企業調査を行う場合もあれば、その国独自の企業データバンクと提携し、信用調査を委託したり、既存のレポートを翻訳して提供する場合もあります。

デューデリジェンスでは、当然企業信用レポートを取得し、その情報を基礎情報として活用します。本当の意味の信用調査は、企業信用レポートに記載されている事項が正確かどうかを精査していく過程を指します。海外の企業信用データは、政府機関からの公開情報を転記している場合もありますし、その企業の担当者への直接取材による自己申告データも含まれています。その意味で、企業信用レポートに登録されたデータの正確性は、100%担保されているものではありません。

中国

中国では実際は国営企業(SOE=State Owned Enterprise)が多数存在します。国営企業の要素があれば政官界との癒着が当然懸念されます。

表面的には国営企業であることが分からない法人も多数あります。

中国企業には、営業体質や組織構成に不透明な部分があることが珍しくありません。しかし、中国は世界の工場と呼ばれており、全世界の企業を対象とした国際取引が盛んです。その意味で、企業の格付けを行う信用調査会社が発達しており、企業信用レポートは比較的簡単に入手可能です。また、訴訟履歴や行政処分履歴などは、公開情報としてアクセス可能です。西側諸国のデューデリジェンスの慣例に合わせて、標準的な情報収集が行える体制が整備されつつあります。

アメリカ

アメリカでは、個人に関する情報は世界でも最も入手しやすい国情となっています。しかし、企業に関しての公開情報には整合性が欠如し、ワンストップの情報収集が容易ではない状況があります。

企業の設立や変更に関しては、企業側の自己申告データに基づく登録であるため、その情報の公信力が欠如している可能性があります。

ただし、訴訟履歴や処分履歴犯罪履歴や税務滞納履歴などのネガティブ情報に関しては、ほぼすべて公開情報で精査が可能です。企業データバンクから取得した情報をもとに、様々な公開情報から、企業やその個々の役員に対するネガティブ情報のチェックを総合的に実行していくのが、アメリカでの信用調査デューデリジェンスの王道です。

ヨーロッパ

ヨーロッパに関しては法律と通貨がEU政府のもとに統一されています。企業に関しての公開情報は整備が完成されており、基礎的な情報をすべて公開情報から、適宜、取得・確認が行える状況となっています。

しかしながら 、EUで統一された公開情報の一元管理のデータベースがあるわけではありません。公開情報のソースは、各国でバラつきがあります。それぞれの国や言語に即したデータソースを把握し、個別に調査対応していく必要があります。

企業に関するネガティブレコードに関しては、完全公開が原則となっています。スキルと知識を持った現地の調査員を起用すれば、非常に精度の高いデューデリジェンスを行うことができます。

FCPAについて

海外の信用調査では、FCPA(Foreign Corruption Protection Act=腐敗防止法)に即したデューデリジェンスを意識する必要があります。会計上の不正、マネーロンダリング、政財界との癒着、談合などの不正取引といったアスペクトに関し重点的にチェックを行います。

腐敗防止法の規制は、アメリカ・ヨーロッパなどの欧米諸国と、中国政府などで次第に強化されています。取引やM&Aが完了した後に、腐敗や不正が発覚してしまうと、公正取引や不正競争を取り締まる政府機関から、莫大な反則金を課される可能性もあります。さらに、それに付随して、株主代表訴訟で巨額な損害賠償請求を受ける可能性もあります。

FCPAについての詳細は、以下のブログをご覧ください。

まとめ

海外の企業信用調査では、単なる財務状況の確認だけではなく、企業や役員の訴訟歴、行政処分歴、犯歴、役員就任歴、株式保有記録等を公開情報で確認していく必要があります。訴訟歴、犯歴、株式保有状況、役員就任履歴等が、日本で取得不可能だからといて、日本の常識にとらわれないことが賢明です。日本は、隔離された立地や言葉のバリアの影響で、商習慣、文化、法律等に関して、独自性が強すぎる傾向があります。日本の常識を海外に当てはめることなく、主要な諸外国で標準的にチェックされる調査項目を、漏れなく確認していく必要があります。

デューデリジェンスの概要や、目的に応じて必要となる調査項目など、全体をまとめた記事はこちらからご覧ください。

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