子供の連れ去り・ハーグ条約案件の解決事例|Japan PIの調査事例

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アメリカ人の男性から、日本人妻が子供を連れ去った案件の依頼を受けました。依頼者夫婦は、2歳の息子と、アメリカで生活していました。2019年12月、日本人妻が、息子を日本へ連れ去りました。

子供の連れ去りは犯罪

依頼者はアメリカの裁判所で子供の返還を訴えました。アメリカの裁判所では、2020年1月に、対象者に対し、子供の返還命令が出しました。アメリカでは、片親による子供の誘拐事件となり、刑事事件となりました。

これは国際的な子供の連れ去り事件であり、アメリカでは犯罪です。ハーグ条約の返還手続きを申し立てれば、日本の中央当局が子供の返還を支援しなければならない案件です。依頼者は日米の弁護士を雇い、ハーグ条約の子供の返還請求の申し立てを行いました。

母が親権者詐取

日本の弁護士が、誘拐親(TP=Taking Parent=連れ去った親)である母親と子供の住民票や戸籍謄本を請求しました。日本の戸籍登録では、2019年12月に離婚届が受理され、親権者が母親となっていました。依頼者は、離婚に同意したものの、親権者を母にする同意はしていません。しかし、彼女は、配偶者の同意なく、勝手に子供の親権者となっていました。

日本では共同親権の制度がないため、離婚した場合は両親のどちらか片方が親権者になるしかありません。アメリカでは、離婚すれば共同親権が普通です。

アメリカ人にとって、日本で一般的な協議離婚の制度すら理解できません。アメリカでは、離婚は裁判離婚しかありません。また、日本に共同親権制度がないこともアメリカ人にとっては、想像できません。

従って、離婚届では、片親の自己申告の主張が勝手に通り、親権者が他方に決定されることは、依頼者にとって想定外でした。

住民登録偽装

誘拐親は、実家の住所に住民登録していました。しかし、実際には実家の住所には居住していません。実家住所では、祖父(誘拐親の父親)しか出入りしていませんでした。

実家を数日監視したところ、祖母が一度、実家に立ち寄りました。ただし、その時点でそれが祖母かどうかは我々はわかりませんでした。依頼者に報告してそれが祖母だったことがわかったのです。

それ以降、祖母が実家に現れることはありませんでした。実家住所は、路地の奥にあり、立地的に張り込みが困難でしたが、忍耐強く関しを継続するしかありませんでした。祖母が実家にいないということは、逆に言えば、祖母が、誘拐親と子供との関係が深いということになります。祖母が、誘拐親と子供の生活をサポートしているに違いないということです。

祖母を追跡

張り込みを忍耐強く継続しました、祖父の姿は確認できても、祖母の姿はなかなか確認できませんでした。依頼者の情報では、対象者は父親から金銭的支援を受けているとのことでした。

7日後、ついに、祖母が、再度、実家に現れました。そこから、祖母のマークに切り替えました。祖母は、ホテルの清掃員をしており、親戚宅で寝泊まりしていることがわかりました。

所在判明

祖母を数日マークすると、ついに、誘拐親と子供とレストランで接触しました。外食ディナーの後、誘拐親へマークを切り替えました。そして、誘拐親と子供の潜伏先の割り出しに成功しました。

対象者側も、追われている立場を自覚しています。そのため、住民登録を偽装し、車両の使用もやめていました。祖母自体も、自宅に寄り付かず、親戚宅に身を寄せて、警戒していました。

更に、外出する時は帽子とサングラスを着用し、変装していました。コロナウイルスのパンデミック状況下ですから、マスクは当然ですが、縁の深い帽子とサングラスで、顔はほとんど露出しておらず、写真だけで対象者を特定することはほとんど不可能な状況でした。

なにはともあれ、誘拐親と連れ去られた子供の潜伏先が判明し、依頼者が、弁護士にその情報を共有しました。弁護士は、判明した潜伏先の住所をもとに、ハーグ条約の返還を再度申立することになりました。潜伏先不明のため、強制執行ができない状態でしtが、対象者の所在が判明したことで、一気に展開が変わることになりました。

外国判決の適用条件

ちなみに、外国での判決を日本で適用させるためには、外国判決の承認という制度を利用します。日本では、民事訴訟法118条の承認要件を満たせば、外国判決は日本でも有効です。

承認要件は以下の4項目があります。

  • 管轄
  • 特別送達
  • 公序良俗
  • 相互保証

上記の承認要件の中では、外国からの特別送達の部分が、最もハードルが高くなるところです。一つ一つを簡単に解説すると、以下のようになります。

管轄

例えば、台湾の裁判所の判決の場合、日本は名目上台湾と国交がないため、要件を満たしません。

特別送達

送達に関しては、配送した被告側に防御や弁護の機会が与えられるかどうかが問題となります。要するに、判決の特別送達が正当に行われたかどうかが問題となります。公示送達的な手法では承認が得られない可能性が高くなります。

公序良俗

公序良俗に反する外国判決は、日本では適用されません。例として、16歳未満の未成年者との結婚や、賭博による借金の債権回収などでは、承認されません。

相互保証

相互保証に関しては、お互いの国で、ある程度似通った法律が存在するかどうかがポイントです。

ハーグ条約違反

強制執行に関しては、判決のように自動承認されるわけではなく、別途、日本で執行判決を取得する必要があります。

理論上、上記のような流れで外国で判決を取得できれば、日本でも執行判決を取得することは可能です。しかしながら、実務上では、執行判決を取得しても、執行が実現しないケースが多々あります。

まとめ

子供の連れ去りに関するハーグ条約は、訴訟手続によらずスムーズに国際間の子供の連れ去り問題を解決するための条約です。しかしながら、連れ去った親による虚偽DVの訴えや、子供の所在を隠す行為などにより、子供の返還の執行が機能しないケースが多発しています。

この問題は深刻化しており、2020年7月には、EU議会が日本に対して、子供の連れ去りを禁止する厳格な措置の要請を採決しています。2014年に子供の連れ去りのハーグ条約に日本が調印したのも、アメリカ政府の圧力によるものでした。

日本は先進国中、唯一、共同親権制度がない国です。共同親権がないという法制度の問題と、民事執行実務の欠陥が、子供の連れ去り問題を悪化させています。

過去に、日本で独自進化した携帯電話がガラ携(ガラパゴス携帯)と呼ばれ、自嘲の対象となっていました。司法の世界では、ガラ法(ガラパゴス法)だらけの状態です。司法の世界のグローバル化も急務だと思われます。

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