反社チェックの実態 – ヤクザのフロント企業を見抜く方法

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企業向けの興信所サービスを行っているJapan PIでは、取引やM&Aにおけるデューデリジェンスの一環として、取引先企業の反社チェック業務を行っています。今回の記事では、日本における反社チェックの実態と、取引を避けたいヤクザのフロント企業の見抜き方をお伝えします。

反社チェックは「義務」なのか?

結論から言うと、企業の取引では、暴力団排除条例(以下、暴排条例)により、反社会的勢力と取引をしてはいけないことになっています。ただし、暴排条例では、事前の反社チェック自体は「努力規定」であり、絶対的な義務ではありません。

業界ごとに事例を見てみましょう。金融機関では、契約を行う前の段階で、相手に対して無条件で反社チェックを行っています。また、都道府県の暴力追放運動推進センターの賛助会員となって、反社会的勢力リストの提供を受けている企業もあるでしょう。金融機関による銀行口座の開設の他にも、反社会勢力は、携帯電話や自動車、不動産契約もできないと言われています。

ただし、一般的に、取引をする側の企業としては、潜在顧客に反社会的勢力の関係者疑いが出た時に、反社チェックを行うのみです。反社チェックを行う代わりに、契約の際に暴排条項を入れ、顧客側に反社会的勢力の関係者でないことを表明させます。ちなみに、契約の際に暴排条項を入れること自体も努力規定であり、絶対義務ではありません。

たとえば、携帯電話や不動産の契約が生じていても、のちに反社会的勢力であることが確認された場合、暴排条項に基づき催告なく契約を解除することができます。つまり、実務上は暴排条項を入れた契約を締結し、商取引の契約を進めます。そして、万が一後に反社会的勢力であることが確認取れた場合に、暴排条例違反で契約者が詐欺罪などで逮捕されることになります。

従って、反社会的勢力側としても、携帯電話や不動産賃貸物件を契約できたとしても、自身の正体がバレた時、それが原因で詐欺罪などで逮捕されてしまうことになるわけです。したがって、反社会的勢力側はわざわざその危険を犯して携帯電話や不動産の契約をしようとは思わない、ということです。このような背景から、企業側としては、反社チェックを毎回行うということよりも、契約に暴排条項だけ入れておいてとりあえず契約を進めてしまうというのが実態だと思われます。

暴排条項はネズミ捕り?

警察庁は、日本証券業協会と全国銀行協会に、警察庁が管理する反社情報照会システムへアクセスを許可し、銀行や証券会社で口座開設や融資申し込みがあった際、オンラインでの反社チェックを義務化させています。ちなみに銀行は、預金保険機構を通じて、反社情報照会システムのデータチェックを行っています。

しかし、証券会社と銀行以外では、反社チェックの照会が義務付けられているわけではありません。各都道府県の暴排条例では、反社会勢力への利益供与や利益享受が禁止されていますが、あくまで「努力義務」です。守らなくても罰則はなく、関係した場合、勧告や公表の対象になるというものです。

不動産業界では、警察庁や国土交通省が主導し、「不動産業・警察暴力団等排除中央連絡会」を設定していますが、反社情報照会システムでのオンラインチェックができるわけではありません。ただし、不動産売買で、金融機関の融資が絡んでくれば、金融機関側で反社情報照会システムのチェックが入ります。

ただし、不動産の現金取引や賃貸契約の際には、反社チェックはあくまでも努力義務です。契約時に暴排条項を入れて、顧客が反社会勢力でないと宣言させます。そして、後に顧客が反社会勢力であることが発覚すれば、暴排条項に基づき、即時契約を解除する流れとなっています。

携帯通信会社にしても、同様です。反社会勢力でも、契約時に入念なチェックはされない為、契約自体は可能かもしれません。しかし、のちに反社会勢力であることが発覚すると、暴排条例に基づき、詐欺罪で逮捕される危険があります。

従って、警察側からすれば、とりあえず反社会勢力は泳がせておいて、何かあれば、暴排条項を逆手に取って詐欺罪で逮捕すればいい、というスタンスであるように思われます。証券業界と銀行業界以外、オンラインでの反社チェック義務がないことにシステム上の問題があるようにも思えますが、実際には、現在の方法にもある程度の実行力があるのかもしれません。

知らずに反社会勢力と取引、逮捕されるの?

反社会的勢力と取引したからといって、その契約自体で、逮捕されたり、罰金を支払わされたりすることはありません。ただし、一度、反社会的勢力と取引してしまうと、その後、すっとたかられてしまう危険があります。また、関係が深まってしまうと、密接交際者とされてしまい、自身も反社会的勢力とみなされてしまう危険もあります。

たとえば、反社会勢力と、一度だけゴルフや飲み会に出席した場合は、それだけで密接交際者とみなされることはありません。ただし、芸能人や政治家や著名人の場合、反社会的勢力と一緒に撮影した写真が世間に出回ると、大変は風評被害を受けてしまうことになります。

一般人が知らないうちに反社会勢力と接点を持つ可能性があるとすれば、一番気をつけたいのはフロント企業との接触でしょう。それ以外でも、反社会勢力との接点を避ける為には、反社会勢力の資金獲得方法について、体系的な基礎知識を持っておくことが重要です。

反社会的勢力は基本的に犯罪や違法行為を生業としています。ただし、違法行為や犯罪のカバーとして、合法ビジネスを営んでいる場合もありますし、反社会勢力の資金源としてのフロント企業も存在します。

ヤクザのシノギ(資金獲得活動)についての基礎知識 

知らないうちに反社会的勢力と関わりを持たない為には、反社会的勢力のシノギ(資金獲得活動)について、基礎的な知識を持っておく必要があるでしょう。反社会的勢力は犯罪や違法行為を資金獲得活動の中心としています。ただし、違法性を隠蔽する目的や、間接的に犯罪や違法行為を利用することによって、合法的な正業を営んでいる側面もあります。これは、基本的に「フロント企業」と呼ばれます。

ヤクザや警察の隠語で紐解くシノギ 

警察では、犯罪の種類別の隠語があります。犯罪の種類はおおよそ類型化されています。そして、警察やヤクザや不良の連中の間で、それそれの犯罪を指す隠語があります。逆に言えば、反社会的勢力の資金獲得活動には、種類毎に独特の隠語があるわけです。つまり、反社勢力のシノギは、犯罪の種類毎に類型的に理解しておくことが重要となります。

たとえば、犯罪用語の部首にちなんだ隠語が多数あります。窃盗は「うかんむり」、詐欺は「ごんべん」、強盗や強姦は「ゆみへん」、汚職は「さんずい」、横領は「よこ」です。警察の隠語ではありませんが、恐喝は「カツアゲ」と言われます。ヤクザのみかじめ料やケツ持ち代、用心棒代はカツアゲの一種とも言えます。

犯罪の隠語とヤクザや半グレのシノギ

ヤクザや半グレ等、反社会勢力の資金獲得活動は、犯罪や違法行為が中心です。従って、そうした資金獲得活動のほとんどに隠語が使われます。逆に言えば、隠語によって、反社会勢力の活動をカテゴライズすることができます。

タカリ 恐喝系

  • みかじめ料、ショバ代、ケツモチ、用心棒代
  • 会費収入の為、毎月安定収入が得られる。
  • 集金ツールとして、おしぼり、つまみ、酒卸等の企業舎弟を介在させる。

バクチ 賭博系

  • 裏カジノ、野球賭博、ノミ屋等

ヤミ金 金融系

  • 反社会勢力は、その暴力装置を背景として、オイコミ(債権回収)を得意としています。債権回収が得意なわけですから、金貸しとしては最強です。

スケコマシ 風俗・売春系

  • キャバクラ、風俗店経営、AV会社

テキヤ 露天商

  • 的屋系ヤクザは、露天商を主要な資金源として活動しています。

ヤク 麻薬密売

  • 覚醒剤やマリファナ、MDMA等
  • 覚醒剤は「シャブ・エス・スピード・アイス」、マリファナは「野菜・ガンジャ」、MDMAは「罰」、といった隠語があります。

ごんべん 詐欺系(詐にごんべんがつくから)

  • 特殊詐欺・振り込め詐欺(ヤクザや半グレの隠語では「電話」と呼ばれます。)
  • 半グレの得意技で、ヤクザも若年層ではこれが中心的シノギとなっています。

タタキ 強盗系(被害者をたたくことが語源)

  • 闇カジノや脱税資金の強盗(反社会人どうしのタタキも頻発している)
  • 反社会勢力への締付け強化のせいで、共食いが頻発しています。

のび 窃盗系(しのびが語源)

  • 車両、密猟、農作物窃盗等

にんべん 偽造品密売(偽に「にんべん」がつくから)

  • コピー商品、DVD、コピーソフト、とばし携帯、とばし銀行口座、偽造身分証などの販売

密輸

  • 薬物、武器、金塊密輸、ビットコイン密売、外国人売春婦の人身売買等

半グレの場合、上記のうち、ごんべん(詐欺)とスケコマシ(風俗、AV)とヤク(麻薬密売)に特化しています。半グレは、抗争の時も、拳銃や刃物を使わず、素手や野球バットなどで襲撃する傾向が強いです。銃刀法違反で罰則が重くなることを避ける傾向があるということです。しかし、ハングレでもヤクザに入っている人もいますし、ヤクザも半グレと共存している場合もあり、明確な境界を引きにくくなっています。

反社会勢力のよくある正業の具体例

次に、反社会勢力が関与している可能性がある正業のよくあるパターンを解説していきます。最初から違法業務であることがわかりやすい稼業であれば、反社会勢力であることを見分け安いですが、正業を表看板としている企業舎弟もの場合、一見しただけでは反社会勢力であるかどうかわかりません。どういう職種が、反社会勢力の企業舎弟として利用しやすいかについて、予め研究しておけば、知らないうちに反社会勢力と関わってしまうリスクを低減することができます。

裏稼業のカバーとしての企業舎弟(フロント企業)が多い職種は以下の通りです。トラブルが多い、不動産、金融、夜間飲酒店、風俗業、裏稼業等では、反社会勢力に対するケツモチとしてのニーズもあります。もちろん、以下に挙げる業種が、必ずしも暴力団のフロント企業というわけではありません。 

  • 不動産 – 地上げ・競売屋・事件師
  • 金融業 – 闇金・シテ筋・事件師
  • 産廃業 – 不法投棄
  • 人材派遣 – 人夫出し・原発作業員等
  • 建設業 – 公共工事汚職・人夫出し
  • 警備業 – 公共工事汚職
  • 運送業 – 廃棄物運送・夜逃げ屋
  • 中古車 – 盗難車密売
  • 飲食業 – ボッタクリバー・違法客引き
  • 風俗業 – 裏風俗等 
  • 興行 – 芸能界・格闘技等・AV会社
  • リネン業(おしぼり、酒屋、花屋)
  • IT系 –  風俗広告・アダルトサーバー屋
  • ペーパー会社 – 介護や整骨院など通じて保険詐欺
  • 探偵業 – 被害者救済詐欺・闇債権回収(エセ探偵業)・別れさせ屋・復讐屋
  • カフェ – ネットカフェ、ペットカフェ

巧妙化するフロント企業

現在、暴力団に対する取締が強化され、安定的な収入になる正業を営んでいる反社会勢力が増加しています。フロント企業であっても、従業員が一般人の場合が多く、反社会勢力とのつながりが簡単にわからないケースが増えています。

なお、探偵業では、過去5年内の暴力団員や過去5年以内に犯歴がある人物は探偵業の登録ができません。探偵業登録の際は、警察署で犯歴照会等を受けて認証を受けることになります。ただし、探偵業者の従業員として探偵業に従事する場合、犯歴照会等を受ける必要はありません。また、実質的支配者として反社会勢力が関与していたとしても、事件捜査が入らない限り、発覚しない場合がります。探偵業の実態からの推測ではありますが、このように日本では、法人の株主や出資者を公開する必要がなく、法人登記簿にもそうした情報が入らない為、フロント企業を作りやすい環境にあるかもしれません。

反社会勢力側も、景気がいまいちな上に規制が強化されたせいで、フロント企業の影に巧妙に隠れるようになってきています。犯罪であれ、正業であれ、金になれば何でもやるという風潮になりつつある模様です。犯罪や違法行為が金になりやすいに決まっていますが、その分、逮捕されるリスクも大きく、リスクを軽減する為に、フロント企業を利用し、組織的に資金源を獲得しているというのが現状でしょう。

吉本興業の芸人のスポンサーの反社会的勢力 

2019年6月に、吉本興業の芸人が、反社会勢力のパーティで闇営業していた問題が発生しました。この時、芸人を招待した反社会勢力は、半グレの特殊詐欺グループでした。この詐欺グループは、株式会社CARISERA(代表者:小林宏行)というフロント企業(マネーロンダリングのためのダミー会社)を経営しており、この会社を通して芸人のギャラを支払っていました。この会社は東京都渋谷区神宮前で、エステサロンを実際に経営していました。

この会社の代表者の小林氏が、2016年2月に逮捕されたことで、反社会勢力であったことが発覚しています。この詐欺グループは、架空の太陽光発電会社の社債販売詐欺を組織的に行い、総勢48人が逮捕されました。主犯の大野春水は、特殊詐欺業界の大物である戸田雅樹受刑者の部下でした。戸田氏は、2010年に組織犯罪処罰法(組織的詐欺罪)違反で懲役20年の実刑判決を受けています。大野春水は、2010年にも戸田雅樹の事件で逮捕歴がありました。

しかし、CARISERAの小林宏行だけでは、小林が逮捕されるまでは、詐欺グループとの繋がりを見抜くことが難しかったと思われます。ただし、小林は大野の部下であり、芸人を読んだパーティではは、両者が一緒にいたはずです。そういう意味で、法人の登記簿だけではわからない関連人物の氏名で反社チェックを行わないと、反社会勢力を見抜けないということです。

まとめ:取引規模も考慮しつつ、適切な反社チェックが必要

一般に、比較的規模の小さな契約であれば、暴力団排除の条項を設定することで、反社会的勢力に対して一定の抑止力があると言えます。しかし、大型の取引やM&Aなど、金額が大きくなる契約の場合、その後の関係性やリスク、風評被害などを考慮すると、事前に反社チェックを行った方が賢明です。

Japan PIでは、企業向けサービスの一環として、反社チェックの業務を承っております。

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