冤罪で20年収監中のアメリカの受刑者|Japan PIの調査事例

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虚偽告発の強姦事件で20年服役中のえん罪受刑者を救え

カリフォルニアの私立探偵から、刑事事件のプロボノ調査引き受けてもらえないかと相談がありました。無実を主張しながらも、強姦の罪で19年間服役しているアメリカの受刑者の冤罪を晴らすための調査です。「プロボノ」とは「職業ボランティア」、つまり社会正義のために専門知識を用いた、無償のボランティア活動を意味します。

レイプの被害者(告発者)は、当時、美容関係の専門学校の留学生だった日本人女性です。受刑者の話では、自称被害者の女性とは合意のもとで性行為を行っており、被害者とされる女性は元々薬物中毒で逮捕歴もあり、被害妄想を起こしていたとのことです。また、彼女には当時別のボーイフレンドがありました。受刑者と性行為をしたことがボーイフレンドに発覚することを恐れて、受刑者にレイプされたと虚偽の証言をしたと、彼女本人がのちに友人に告白していたときかれています。

その友人というのは、被害者と同じ美容関係の専門学校に通っていた日本人女性です。その事件が発覚したのち、告発者からすぐに相談を受けていたことが分かっています。被害者か証言者から、受刑者の冤罪の証拠となる証言が取得できれば、受刑者の事件の再審が開始され、受刑者の冤罪が即時釈放される運びとなっていました。

被害者も証言者も、留学の後、アメリカから日本へ戻って、現在も日本にいる可能性が高いことがわかっていました。しかし、日本での連絡先や古い住所もわかりません。したがって、被害者(告発者)と証言者の双方の所在を突き止める必要がありました。

被害者と証人の所在を探せ

受刑者の無罪を裏付けるための、新たな証言を取得するのが我々のミッションです。具体的には、まずは被害者本人の所在を判明させ、彼女からの直接の証言と、彼女の友人からの反対証言を得ることが最終目的でした。受刑者には資金がなく、カリフォルニアのInnocence Project(えん罪救済センター)の刑事弁護専門の弁護士も、探偵調査員も、プロボノ(職業ボランティア)で、活動していました。アメリカの担当探偵のMark氏から説明を受け、当方もプロボノで刑事事件調査を引き受けることにしました。

刑事事件専門のアメリカの探偵

まず、我々が日本側で被害者と証人の所在を探し手がかりが得られれば、アメリカからMark氏が来日し、被害者や証人からの供述調書作成を合同で行うことになりました。 Mark氏は日本にも冤罪救済センターがあるかを聞かれたため、2016年に日本でも冤罪救済センターが設立され活動を続けている旨と、 活動に参加している大学教授や弁護士はいるものの、探偵社が冤罪救済センターの調査を担当したという話はまだ聞かない、と回答しました。

日本では、警察や検察の権限が強大で、刑事事件では警察のみが捜査活動を行います。刑事被告人は、弁護士を雇うことはできます。しかし、刑事被告人が探偵を雇った例については、聞いたことがありません。国選弁護人の制度はあっても、国選探偵という制度はありません。刑事裁判でも、本来ならば刑事被告人に有利な証拠を集める警察のカウンターパートである私立探偵が存在するほうが、普通なのかもしれません。しかし日本ではその発想すらないのが現状です。

日本人留学生からレイプで告訴された

事件の詳細の話に戻ります。1998年、受刑者のBill (仮名)は当時27歳でした。大卒で、日本人との婚姻歴があ利、SE(システムエンジニア)として働いていました。その時、当時22歳の日本人留学生のMari(仮名)と知り合い、ある日、彼女の部屋で男女の関係となりました。Billにとっては、合意のある性関係と思っていました。しかし、Mariは、銃器で脅されて強姦されたと主張し、事後に警察へ通報しました。Billは即逮捕されました。彼は一貫して無実を主張しましたが、告発者の主張が全面的に通ってしまい、懲役25年の実刑判決が出てしまいました。彼が罪状認否で無罪を主張したため、強姦事件としては最長の刑期である25年の刑が確定したとのことでした。

警察が被告人に有利な証拠をもみ消していた?

Billの主張や関係者の一部の証言で、当時から、Mariの告発は虚言であった可能性がありました。Mariには、当時、交際中の別のアメリカ人男性がいました。Mariは、Billと関係を持ったことが交際中の彼氏にバレることを恐れて、苦し紛れにBillに強姦されたと彼氏に語ったようです 。彼氏はそれを真に受けて激怒し、すぐに警察に通報しました。Billがすぐに強姦罪で警察に勾留されたことを知り、Mariはすぐに友人女性に相談したそうです。その時、Mariは、同じ美容専門学校の女友達に、本当は「あれは強姦ではなかった」と告白していたのです。しかし、警察がそうした証言を正式に取り上げることはないまま、Billの有罪が決定してしまいました。

Mariの素行

Mariの父親は、日本では一流大学卒の高級官僚であると言われていました。Mariは上流階級の家庭の出身でしたが、素行は不良だったようです。学業の成績が悪かったのですが、アメリカ留学で体裁を整える為、両親から留学資金を出してもらっていた状況でした。噂によれば、日本にいるときからアルコール中毒で、カリフォルニアでは、水筒にウイスキーを入れて学校に来ていて、飲酒していないときは手が震えていたと当時の友人が語っていました。

レイプの状況

Mariの証言では、自宅に友人として招いたBillが、急に拳銃で脅して関係を迫ったとのことです。ガムテープで手足を縛られて、性行為を強要されましたが、Mariがコンドームを使うよう懇願したところ、Billはそれは実行してくれたとのことです。行為が終わった後、Billは自宅へ帰って熟睡しているところへ、通報でかけつけた警察に逮捕されています。犯行に使用されたとされるガムテープにはBillの指紋がほとんどついていなかったとの鑑識結果ですが、警察では当時あまり問題にされませんでした。

Billは罪状認否で罪を認めていれば、刑期が大幅に短縮されていたところ、無罪を主張したことにより、25年以上の実刑が確定しています。当方がこの捜査を担当した2016年の段階で、既に19年の収監生活を送っていました。

Facebookの出身地情報から被害者の実家を割り出す

日本側で集中的なメディアサーチを行ったところ、カリフォルニアの美容専門学校を卒業している人物で本人と氏名が一致するFacebookアカウントを発見しました。そのアカウントには、出身地が東京都港区と出ていました。アメリカ側の情報では出身地の情報もなかったのですが、Facebookで分かった情報をもとに、さらにリサーチを継続しました。そして氏名、生年月日、居住地域の情報から、告発者の女性の実家の住所を割り出すことに成功しました。

その後、念のため公簿調査を頼りに、被害者であり本人の現住所(東京都渋谷区)も判明させることができました。日本に戻ってから日本人男性と結婚し、子供がいましたが、現在は離婚して一人暮らしでした。子供の親権は元配偶者が取得していました。 

20年前の証人を探せ

Mariから、本当はレイプではなかったと告白を受けていた友人女性のAsuka(仮名)の連絡先を探すことが、我々のもうひとつの重要なミッションでした。情報としては、被害者と同じ美容専門学校に通っていた日本人留学生の女性であること以外、下の名のアルファベット表記しかありませんでした。

メディアサーチでは、アメリカの美容専門学校卒業と、下の名前が一致する人物は発見されませんでした。しかし、カリフォルニアの美容専門学校を卒業して美容師として勤務している同年代の女性が3名浮上し、その3名のさらなるリサーチを継続しました。最終的に、3名の勤務先特定しました。彼らが、被害者や証人であるAsukaの友人であることを祈り、連絡を取りました。

3人目に連絡を取った人物が、Asukaという同級生がいたことを認めました。運良く、Asukaの名字がKimuraであり、博多在住であったことがわかりました(本記事では姓名ともに仮名を利用しています)。博多在住のAsuka Kimuraでリサーチを継続すると、2名の条件一致者が浮上しました。さらに絞り込むと、そのうち1件が、アメリカの美容専門学校に留学経験のある人物であることがわかりました。しかし、当時から19年の歳月が経っているため、そのAsukaはすでに結婚し、現在は愛媛県松山在住であることがわかりました。

被害者の日本での訴訟記録も確認

被害者のMariの過去の訴訟履歴を確認したところ、10年前に首都高速で飲酒運転による追突事故を起こし、業務上過失致死罪で逮捕されていたことがわかりました。どのような量刑が出ていたかは分かりませんが、民事責任としても遺族への相当な損害賠償が請求されていたと予想ができました。

その直後にMariが離婚をしていたことからすれば、Mariの素行が悪く、それが離婚原因になったものと推察されました。

アメリカの探偵と被害者直撃

日本側の被害者と証人の連絡先調査が完了したため、アメリカの刑事事件探偵のMarkさんが来日し共同で供述調書調査を行うこととなりました。まずMarkさんが東京に到着したため先に被害者のMariを先に取材することになりました 。

アメリカのMarkさんの意向で、アポイントを取らずに直接彼女の自宅を訪問しました。対面で話すところまではできましたが、結果的に、訪問の趣旨を話した瞬間に彼女が怒り出し、まともに話すことが不可能でした。

「今、別の証言をして、告訴を取り下げたとしても、あなたには何の不利益も発生しません。時効の為、偽証罪に問われることもありません」と、Markさんの英語の説明を、日本語に同時通訳しながら説得を試みましたが、Mariは感情的になり、一方的に会話を打ち切り、取り付く島がありませんでした。

松山のAsuka

次に、有力な証人である、松山のAsuka氏を訪ねました。事情を説明すると、彼女は、証言に協力することを約束してくれました。やはり、事件の直後、MariがAsukaに相談し、本命のボーイフレンドに浮気がばれることを恐れて、咄嗟に強姦されたとにしてしまい、取り返しがつかなくなったと語っていたとのことでした。彼女は、受刑者の状況に同情し、証言をすることに同意してくれました。

アメリカで再審が始まる

冤罪の証明となりうる証言が得られた為、Billの事件の再審が始まる運びとなりました。その後のMarkさんからの連絡で、再審が進んでいるが、やはり被害者本人のMariから虚偽の告訴であったことを認める供述調書が取得できないと、受刑者が釈放されない状況になっていると知らされました。

結局、現在の受刑者がすぐに釈放されるところまでは行きませんでした。残念な部分もありますが、これが現実です。

アメリカの懲役期間が長すぎる問題や、被害者の証言を鵜呑みにして慎重な捜査を行わないアメリカの警察の欠点なども明るみに出てきました。日本の警察や裁判所も、人質司法などと海外から批判されたりします。どちらも一長一短なところがあります。ただし、アメリカでは刑事訴訟でも国選探偵のシステムがあるなど、公平性の面では一歩リードしている感じがあります。

Billは、無実の罪で収監された25年の刑期を終えようとしています。

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