諜報機関と探偵(1) – 京都で襲撃されたタイ人亡命者  

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これから「諜報機関と探偵」全4回の連載で、探偵が関わった諜報機関や軍部の国際秘密工作について、現役の探偵がリアルに解説します。

古くは、私の大先輩である探偵が、1974年に発生した金大中拉致事件に関与しました。彼は、東京での金大中の行動確認調査依頼を受注していましたが、その後、KCIAによる金大中拉致事件が発生しました。当時、日本政府はKCIAの拉致計画を半ば容認にしていたとも言われています。私の先輩の探偵は、その後、約2年間身を隠していました。その時の逃亡資金は日本政府から支出されていたという噂もあります。

これから、以下の探偵が絡む国際的な秘密工作事件を取り上げます。国際化している現在は、日本を舞台とした国外からの秘密工作事件が増加するものと思われます。

  • 2019年の京都で発生した亡命タイ人教授の襲撃事件
  • 2019年のフランスの亡命タイ人襲撃事件と日本とのリンク
  • 2019年のカルロス・ゴーン逃亡事件
  • 2021年の米国在住亡命イラン人記者拉致未遂事件

京都の亡命タイ人教授襲撃事件

2019年7月、タイの軍政と君主制を批判して政治亡命している日本在住のパビン・チャチャバルポンプン京都大学准教授が、京都市内の自宅で、侵入してきた何者かから襲撃されました。

パビン氏は、2006年と2014年のタイでの軍事クーデターの他、タイ国王をも批判する反体制派の政治活動家でもあります。タイ国王を批判したため、タイ政府から不敬罪で指名手配されており、タイに戻れば終身刑等の樹罪に処されます。

ソース:パビン氏のインスタグラム

2019年の襲撃事件の詳細

2019年7月8日の午前4時ごろ、自宅でパートナーと就寝中、侵入してきたタイ人の男性が、2人に向けて何らかの物質を噴射しました。2人は皮膚にやけどを負っただけで、軽症で済んでいます。

タイ軍部が、言論弾圧のために襲撃したと推測されています。しかし、タイ軍部は関与を否定しています。

京都府警が捜査を担当していますが、いまのところ襲撃犯は特定されていません。

第2の襲撃プロット

2020年12月、京都府警が、京都のパビン氏の自宅付近にいた不審な男性を逮捕したと、英語誌のThe Nation Thailandが報じました。第2の襲撃プロットが進行中であった模様です。2020年12月の逮捕者の動きからすると、探偵業者が所在調査等に関与していた模様です。

以下、同記事の内容の日本語訳サマリーを記載します。

日本に亡命中のタイ人教授パビン氏が監視された

パビン氏はFacebookで12月2日、日本の警察が京都の自宅アパートの前でうろつく30歳前後の男性を逮捕したと述べた。パビン氏の隣人が男の不審行動を見つけて警察に通報した。尋問を受けた男は、11月30日から誰かの命令で彼を「追跡/監視」していたと語った。

他にも以前にパビン氏は何者かに化学スプレーで襲撃されたという。「今回、異常なことが起こりました。誰かが配達員のふりをして私の大学のオフィスに現れました。私がオフィスにいないとわかると、彼はすぐに去りました。大学は警察に警告した。 CCTVから彼の映像を入手し、捜査を開始した」とパビン氏は述べています。

「同じ頃、一週間ほど、非通知で電話がありました」と彼は付け加えた。 「これは、私が攻撃される前の前回と同じでした。日本人男性が郵便局からの電話のふりをして住所を尋ねた。郵便局に連絡したところ、郵便局は通常、顧客に電話をかけたりすることはないと言われました。したがって、これらは偽電話でした。」

12月2日に逮捕された男は、ヨーロッパ、特にチェコ共和国のネットワークと関与していた。「昨年、オウム・ネコ(民主主義活動家)が攻撃され、警察がチェコ共和国出身の2人の男性を逮捕することができたのは偶然ではない」と彼は述べた。

彼は、自分の写真をあるツイッターアカウントでみつけた。それはタイ政府の諜報機関の下で作成された可能性がある。パビン氏は、このツイッターユーザーは「京都大学の学生のふりをして、たまたま自転車に乗っていた私に遭遇し撮影したものだろう」と語った。

「アップされた写真は、12月2日に逮捕された容疑者と何らかの関係があります。12月2日に自分が着ていたものをよく覚えています。この男が逮捕されたのは同じ日でした。ですから、この男が私の家の周辺に待機し、私の写真を撮り、バンコクに送って、夕方に逮捕された可能性があります。」

https://www.nationthailand.com/in-focus/30399504

ソース:襲撃犯の攻撃用Twitterアカウント

チェコの襲撃ネットワーク

同時期に発生した、フランスと日本でのタイ政治亡命者への襲撃事件では、首謀者は、チェコ共和国のネットワークを経由して、襲撃を実行させていたことがわかっています。

タイ国王のラーマ10世は、ドイツのバイエルン州に居住しています。バイエルンはチェコとの国境にも近く、タイとチェコは軍事同盟を結んでいる間柄でもあります。

そうしたことから、タイ国王の側近のタイ軍関係者が、チェコの反社ネットワークを利用して、各国に散らばるタイ人の反体制活動の粛清を企図していた可能性が濃厚です。

まとめ

今回は「諜報機関と探偵」連載第1回として2019年の京都で発生した亡命タイ人教授の襲撃事件について解説しました。次回は、チェコの反社ネットワークの実態についてお届けします。


参照記事:

Newsweek Japan|日本で深夜に襲われたタイ人京大准教授 犯行はタイ軍部が関与か

https://www.newsweekjapan.jp/amp/stories/world/2019/08/post-12687.php?page=1

The Nation Thailand|Exiled Thai academic in Japan smells a plot in latest stalking incident

https://www.nationthailand.com/in-focus/30399504

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